スペースX、野口さん乗せISS到着 賭けに勝ったNASA

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/11/21

失敗を恐れない

スペースXが有人宇宙船を打ち上げるこれまでの道のりには、事故もあった。15年にはロケットの1基が発射中に爆発し、ISSに向かう貨物宇宙船を破壊した。翌年には、ファルコン9ロケットが給油テスト中にパッド上で爆発し、積んでいたイスラエルの通信衛星が燃えて、宇宙飛行士の搭乗後にロケットに燃料を注入するというスペースXの計画に不安が生じた。

20年5月、ケネディ宇宙センターでDemo-2ミッションの打ち上げ成功を祝う、スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)(PHOTOGRAPH BY PAUL HENNESSY/SOPA IMAGES/LIGHTROCKET VIA GETTY IMAGES)

しかし、スペースXは事故が起こるたびに原因を特定し、問題を解決して、NASAを納得させてきた。「大切なのは、事故や故障そのものではなく、そこからどうやって修正するかということなのです」とレバスール氏は言う。

今のところ、米国からISSに向かうにはスペースXに頼るしかなく、そのファルコン9ロケットは、これまでに建造されたロケットの中で最も信頼性の高いものの1つとなっている。ロケットブースターの回収・再利用が可能なことが特徴で、同社はこれまでにファルコン9の第1段ロケットを57回以上、地上に着陸させており、ロケットの大部分と9基の主要エンジンの再利用を可能にしている。ファルコン9は同じ第1段ロケットですでに6回も飛行しており、スペースXはこうしたロケットブースターを10回再利用することを計画している。

15年にロケットの着陸を成功させるまで、スペースXは多くの失敗を重ねてきた。彼らは飛行データを収集するための打ち上げを公開で行い、ブースターが爆発する様子も隠さなかった。このアプローチはスペースXの新型ロケット「スターシップ」の開発でも見られ、同社はテストで試作機を破壊しながら設計上の問題を解決している。

「『人前での失敗を恐れない』という同社の姿勢は、従来の宇宙船の開発モデルとは大きく異なります」とレバスール氏は言う。このような姿勢の変化は、スペースXの背景にあるカルチャーから来ているのかもしれない。ちなみにファルコン9ロケットは、『スター・ウォーズ』の「ミレニアム・ファルコン」号にちなんで名付けられた。

当初の懸念に反して、新しいアプローチはうまくいっているようだ。スペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」はNASAの認証を得た。NASAのお墨付きを得た有人宇宙船は、約40年前のスペースシャトル以来初めてだ。今、大胆不敵で勇猛果敢なスペースXが、宇宙における米国の独立を取り戻そうとしている。

(文 JAY BENNETT、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年11月16日付]

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