新常態の就活と採用 大学、学生、企業の実力を問うキャリアセンター座談会(下)

就職ルールの廃止やコロナ禍によって、採用・就職活動は激変している。それに対し、各大学のキャリアセンターはどう対応しているのか。また、就職後に活躍できる学生を見分けるためにはどうしたらいいのか。個性豊かな3大学のキャリアセンターが、オンライン座談会で本音を語った。(Text:白谷輝英)

座談会参加者
学習院大学キャリアセンター担当次長 淡野健氏、芝浦工業大学就職・キャリア支援部次長 三船毅明氏、立命館アジア太平洋大学キャリア・オフィス 滝上博章氏、ファシリテーターは人材研究所代表取締役社長 曽和利光氏

人脈を通じ活躍ぶりを把握するよう努力

曽和 個別の学生がどんな風に学生生活を送っているか、キャリアセンターではどの程度把握しているのでしょうか?

三船 一人ひとりを細かく把握するのは、やはり難しいですね。ただ、なかなか内定がとれない学生などについては、ゼミの担当教員を通じて連絡するなど、できるだけ密なコミュニケーションを心がけています。

淡野 私もゼミの担当教員から、「うちには、○○業界を目指す優秀な学生がいる」などの情報が寄せられます。また、本学では同じ部活のメンバー同士で自己分析・他己分析をやるキャリアセンター講座があるのですが、そうしたルートから学生の情報を知ることもありますね。

曽和 在学中の学生については、個別ではなく、ゼミや部活などの組織を通じて情報を得ているのですね。では、卒業生の活躍ぶりについてはいかがですか?

卒業生と連絡をとってセミナーなどに協力してもらうのも、私たちの重要な役割です。(三船毅明氏)

三船 就職した企業のホームページで仕事ぶりが紹介されているのを見たり、卒業後、就職・キャリア支援部に遊びに来た学生から直接話を聞いたりすることはありますね。ただし、向こうから連絡をくれるケースは少ないので、活躍している卒業生がいないかこちらから探すことが多いです。また、OB・OGのつてで就職した人は、そうした人脈を通じて卒業後の様子を知ることもできます。

苦戦の末にようやく就職できた人は、失敗談など現役学生にとって貴重な話をしてくれるものです。また、就職活動時は苦労しても、入社後は社内に居場所をみつけて大活躍する人も多い。こうした卒業生と連絡をとってセミナーなどに協力してもらうのも、私たちの重要な役割です。

曽和 企業人事は、就職活動のピーク期を過ぎても内定のない学生を色眼鏡で見がちです。でも、そういう学生の中にも、優秀な人は当然たくさんいますよね。

淡野 公務員や教員を志望していた学生が方向転換し、秋から本格的に就職活動を始めるケースなどもありますからね。だからやはり、新卒一括採用というやり方や、同じ採用スケジュールにこだわる必要はないのですよ。3年生時に内定をとっても、4年生の3月にとっても、入社してしまえば皆同じなのですから。

成績優秀者は入社後も活躍しやすいのでは

曽和 最近は、まじめに学業に取り組む学生が増えていると感じます。また、企業側も面接などで、学業について質問するケースが目立つようです。皆さんは、大学時代の学業成績と入社後の活躍との間に、どの程度の相関性があると思われますか?

三船 定量的に語れるほどのサンプルはないのですが、実感としては、かなりの相関性があると思います。昔は一方的な講義と暗記という授業が多かったのですが、最近はアクティブラーニングや、明確な答えがない問いを考え抜く授業などが増えました。また、今は授業の中で自分の意見をプレゼンしなければ評価されません。そうした能力は企業でも役立ちますから、成績のいい学生は入社後も活躍しやすいのではと思います。

曽和 授業そのものが、実際の仕事と近いスタイルになっているわけですね。

三船 はい、そうです。あと、理系の大学・学部って大変なんですよ。大きな声では言えませんが、実験準備などで遅くなり、大学内で雑魚寝している学生をたまに見かけます(笑)。

曽和 IT系のベンチャー企業みたいですね(笑)。

三船 アルバイトや部活の経験をアピールする学生は多いのですが、学生時代に一生懸命学んだと面接の場などで語る学生は意外と少ないものです。しかし、学業にエネルギーを注いだこともアピール材料になると、学生には強調します。

滝上 私も、成績と卒業後の活躍ぶりには相関関係があると思っています。これは仮説に過ぎませんが、目的意識をもって主体的に学んだ学生は、就職後も主体性を発揮し、自ら目標設定をしながら働けるのではないかと思うのです。ただ、成績優秀で課外活動をたくさんやっていても、主体性が弱く「やらされている感」があった人は、上司や先輩から指示がなければ動けない、というケースもあります。

曽和 なるほど、成績という結果より、動機や学習の過程を見るべきだというわけですね。

滝上 そうですね。

淡野 納得です。取得した資格やTOEICスコア、部活動や留学の経験だけではなく、そこで自分が何を考え、血肉となったのかも評価すべきです。

それから企業には、学生をさらに深掘りするような質問を望んでいます。「○○大学の学生だから理解力はあるだろう」「体育会系部活でもまれてきたからストレス耐性があるだろう」などと即断するのではなく、例えばゼミや実験でどんな苦労をし、どう切り抜けて何を学んだかなどを聞いて、人柄や考え方、能力を見極めてほしいですね。

学生に求める条件をもっと具体化してほしい

学生の妨げにならないよう、日程面などの配慮をお願いしたいです。(淡野健氏)

曽和 最後に、大学側から企業への期待をお願いします。

淡野 今は、コロナ禍に対応するために必死に努力する組織と、そうでない組織とに二極化していると感じます。いくら大手企業でも、油断していると学生からそっぽを向かれる危険性もあります。ぜひ、新たな時代にふさわしい観点で、大学と学生を評価していただきたいですね。私たち大学や学生の側も、「知名度がある企業=いい会社」という先入観を捨て、本質を見て選択するよう心がけます。また、企業には学生の視点に立った採用活動をしてほしい。学業や部活に打ち込みたい学生を妨げないような配慮をお願いしたいです。

今後は景気が冷え込み、採用人数の絞り込みも予想されます。ですから、大学、学生、企業のいずれにも、真の実力が問われる時代だと言えそうです。

三船 企業には、自社の特徴をもっと明確に打ち出してほしいですね。学生はもちろん、就職・キャリア支援部の担当者が見ても、「この企業は何で利益を得て、どんな優位性があるのだろう?」と悩んでしまうことが多いのです。また、学生に求めるコンピテンシーも明確にしてほしいです。

学生にとって就職活動は初めての経験。ですから手持ちの情報も少ないし、立場も弱い。人事担当者の皆さんも昔は学生だったのですから、そのあたりをくみ取って温かい目接してほしいです。

目的意識をもって主体的に学んだ学生は、就職後も活躍できるのではと思います。(滝上博章氏)

滝上 私も三船さんと同様で、学生に求めることを具体化してほしいと感じています。各企業は求める人物像を公表していますが、ほとんどは「課題感をもって主体的に動ける人」など抽象度が高いのです。それより、「○○の経験がある人」「○○の課題を解決できる人」「○○のマインドをもつ人」のように具体化していただけると、それにマッチした学生が応募できますし、大学側も学生にアドバイスしやすくなります。その結果、企業にもミスマッチによる早期退職の危険性を下げられるメリットが生まれると思うのです。

曽和 企業人事は学生との面接で「もっと具体的に」と求めることがありますが、企業側にも同様な態度が求められるのですね。

この座談会をきっかけに、大学・学生と企業との間で、相互理解がさらに進むといいですね。今日はいろいろなお話をいただき、ありがとうございました。

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