店主イチオシの「チーズトマトラーメン」

煮干しと昆布の滋養味がたっぷり溶け出した、豊潤極まりない魚介出汁。その出汁にトマトソースを重ね合わせたスープは、ひと啜りで頬が落ちるほど、上質なうま味と甘みが食べ手の胃袋を鷲掴みにする。

もちろん、トマトソースは自家製。大量のホールトマトをベースに、トマトピューレ・ハーブ・塩を縦横無尽に駆使して、手間ひまかけて作られた結晶である。

味の軸を定めるタレは、コク深さを極限まで演出するため、醤油にカツオの和風味を溶け込ませた。「醤油の風味がスープ全体の印象を大きく左右する」として、醤油ダレは徹底的に作り込んである。「屋号の『大地』は、大豆へのリスペクトを込めたものですが、それは大豆が醤油の原料だからです」と市川店主。

店主イチオシのメニューは、基本メニューにチーズを加えた「チーズトマトラーメン」。スープに粘性を持たせるためにデフォルトで搭載される「粉チーズ」に、更にスライスチーズを豪快に盛り付けた、チーズonチーズな一品だ。

店の各メニューには太陽の恵み「トマト」と大地の恵み「大豆」に対する感謝の気持ちがこもる

スープの熱によってスライスチーズが溶解し、溶けたチーズがクリーム色の奔流となってスープへと流出。そのチーズがネットリと麺に絡み付くサマは、目に映るだけで涎が出そうになるほど食欲をそそる光景だ。

トマト、チーズ、魚介、カエシのカルテットが奏でる味と香りのハーモニーに、しばし忘我の境地に陥ってしまった。「麺の風味も楽しんでもらいたい」と、薫り高い全粒粉麺を採用するなど、スープ以外の随所でもギミックが冴(さ)えわたる。トマトを効果的に咬ませた煮干しラーメン。ラーメンという食べ物が多様化の極致に達した2020年。こんな1杯も、大いにアリだろう。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。