新型コロナウイルス禍のあおりを受け、順風満帆とは言いがたい状況で推移してきた2020年のラーメンシーン。それでも、歳月は過ぎゆくもの。年の瀬が近づくに当たり、徐々に「今年の傾向」というものが見えてきた。具体的には何か。それはズバリ、煮干しラーメンの多様化である。
煮干しラーメン自体は数年前に一世を風靡した。煮干しを大量に用いることで、スープがセメント色した「セメント系」などが人気を博したこともあった。そんな煮干しラーメンが今年は、食べ手のニーズに応える形で、より様々なタイプへと分化した年だったと言えるのではないだろうか。
そこで今回は、今年を象徴する煮干しラーメンの新店で東京と千葉にある2軒を厳選し、紹介しよう。1軒目の『中華そばふるいち』はスタンダードに寄り添った煮干しラーメン、2軒目の『麺や 空と大地』は、煮干しスープにトマトを寄り添わせた新機軸だ。皆さまにも是非、自分の舌に合った煮干しラーメンとの出合いを果たしてもらいたい。
東京・多摩地区の西部に位置する羽村市。立川、八王子両市のベッドタウンにもなっているが、都内の「市」を冠する自治体の中で羽村市は最も人口が少ない。その人口規模の割にはラーメン専門店が充実、優良店の割合も高いため、ラーメンマニア注目のエリアとなっている。
本年10月4日、そんな羽村市の最寄り駅、JR羽村駅から徒歩約5分の場所に1軒の新店が産声を上げた。それが、今回ご紹介する『中華そばふるいち』だ。
店を切り盛りするのは、古屋倫太郎店主。同氏は、東京・国分寺を拠点に、都内各地や大阪、韓国、ベトナム等に複数の店舗を構える、都内屈指の実力店のひとつ『ムタヒロ』グループの出身。
しかも古屋氏、単なる『ムタヒロ』の1スタッフだったわけではない。同グループの代表、牟田伸吾氏を長きにわたり支えてきた中心メンバーのひとりで、若手職人のエース級。本店、二号店、拝島駅店など、ムタヒログループの主要店舗の店長を歴任し、満を持して独立を果たした、多摩エリアのラーメンマニアの間では知る人ぞ知る存在になっている。『ふるいち』の屋号も、店主が修業先と相談して決めた。
店舗の外観も、スタイリッシュでセンスを感じさせる。と同時に、余計な装飾が徹底的に排され、実に機能的だ。白地に黒文字で『中華そばふるいち』と大書された看板の視認性は抜群。シルバーの格子模様を強調した外壁も、シンプルで無駄がない。

現在、同店が提供する麺メニューは「中華そば」「塩中華そば」「つけそば」「塩つけそば」「油そば」のレギュラー5種類。汁そば(ラーメン)、つけ麺、汁なしの王道3種を漏らさず用意し、食べ手の味覚の幅の広さに対応しようとする姿勢は、素直に称賛に値する。