ゴールは客の「また来るね」 サッカーに学ぶモス社長モスフードサービス 中村栄輔社長(上)

モスフードサービス社長 中村栄輔氏
モスフードサービス社長 中村栄輔氏

和の要素を取り入れたハンバーガーチェーン、モスバーガー。おいしさにこだわった特別感のあるハンバーガー店としての地位を固め、約689億円の売り上げがある(2020年3月期連結)。中村栄輔氏は同店を展開するモスフードサービスの社長に2016年に就任した。創業家以外で初のトップである中村社長は、創業者の桜田慧氏の精神を受け継ぎつつ、「サッカーの『攻めと守りを同時に行う』発想を経営でも生かしたい」と語る。

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――管理部門出身のトップは外食業界では珍しいです。

「社長に就く数年前から、取締役会で『経営についても若手への世代交代を進めていきたい』という話がありました。なので、『自分自身もトップになる可能性がある一人』だと認識していました。でも、他の外食企業をみると、現場出身のたたき上げが多いですよね。モスがこれまでと同じ道を進むなら、その選択をしたと思います。ただ、あえて私が社長に選ばれたのは変化や変革を求められているのだと受け止めました」

「米国発のハンバーガーを日本化した創業者の桜田慧氏は強い経営理念を持っていました。そのひとつに『心プラス科学』という考えがあります。モスは1972年創業で、もうすぐ創業50年です。その節目を前に次の50年を考えたとき、モスはハートは強いけれど、科学の部分には弱みがあるように見えます。私には、これまでのモスに足りなかった部分を強化する役割が求められていると感じています」

――フランチャイズチェーン(FC)のオーナーと接する際、会社のリーダーとして何を大切にしていますか。

「一言で言えば誠実であることです。オーナーと一緒にアイデアを出して商品作りから販促まで組み立てることもあります。FC方式は本部と加盟店がお互いに信頼しあえる関係がなければ成り立ちません。法務、店舗開発、営業と経験しましたが、それぞれの立場でオーナーと向き合いながら仕事をしてきました。オーナーはみなさん、モスを愛してくれています。彼らの信頼を得られるよう、一生懸命考えて、オーナーにとってプラスアルファとなる提案につなげることを心がけてきました」

「2000年代半ば、私は店長の経験がないまま九州・中四国・沖縄地域を担当する営業部長になりました。当然、『店長経験のない部長で大丈夫なのか』というオーナーの不安が耳に届きます。就任後、全オーナーが集まる場で『私は店長経験がありません。なのでわからないことは正直に聞きます。そのかわり一度聞いたらしっかり理解します』とあいさつしました。すると、すっと輪の中に入っていけたのです。下の名前で呼んでくれるオーナーも増えました。よく話を聞いてメモを取ることは今も心がけています」

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