「ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を併せ持つ」というマツダの新世代エンジン「スカイアクティブX」がバージョンアップ。それで走りはどう変わったのか? 「eスカイアクティブX」と名づけられた新ユニットを搭載する「マツダ3」で確かめた。
価格に見合った価値のために
従来のガソリンエンジンの熱効率と環境性能を大きくジャンプアップさせるブレークスルーテクノロジー、ガソリンHCCI(予混合圧縮着火)。かつては夢の内燃機とさえ呼ばれたそれを、世界で初めて量産レベルで実用化したのがマツダだ。ご存じの通り、マツダ3と「CX-30」に搭載されるスカイアクティブXがそれとなる。
が、それは現状、マツダの屋台骨を支えるほどの人気を得ているわけではない。ディーゼルに逆風が吹く欧州では好調とは聞くも、日本での販売は芳しくなさそうだ。もちろん登場から間もないこともあり、認知が得られていないこともさておき、その認知のための説明が難しいという課題も抱えている。が、何よりスカイアクティブGやスカイアクティブDよりも高い価格に対する明確なベネフィットが伝えられないことが一番の問題だろう。
当初HCCIを開発していた際のマツダの思惑は、GとDの間くらいの価格帯にXを置こうというものだった。が、商品化に向けては24Vマイルドハイブリッド化やコンプレッサーの装着のみならずGPF(ガソリンパティキュレートフィルター)も必携となり、さらには厳密な燃焼管理のためのセンサーの数々、初爆の膨張火炎球を適切にコントロールするためのスパークプラグの採用や、それらを統合管理する膨大なエンジンデータをマネジメントするプログラム作成など、満艦飾化がコストを膨大に押し上げてしまった。
スカイアクティブXが狙ったのはガソリンの滑らかさや高回転フィーリング、そしてディーゼルの低回転トルクや燃費という両者のいいとこ取りだが、なるほどフィーリングには特有の力感はあれど、燃費は期待するほどの伸びがない。すなわちランニングコストでGやDとの差額を埋め合わせることは難しい。
となると、それに代わる納得できるバリューを用意しなければならない。果たして、今回のスカイアクティブXのアップデートは、その姿勢が明確化されたものになっている。
