ともあれワレワレはこの4年間で、無意識的にトランプ大統領のファッションセンスが好きになっていたのかもしれない。だって日本人はヤンキーセンス好きだから。

討論会のネクタイが映した「アメリカらしさ」

そんなヤンキーなトランプ氏もコンサバなバイデン氏も、やっぱりアメリカ人なのだなぁとつくづく思ったのが、「史上最悪の非難合戦」と言われて散々な結果だった1回目のテレビ討論会である。討論の内容はさておき、あのテレビ討論会はさながら「ブルックス・ブラザーズのレジメンタルタイ合戦」であった。

いつもはトレードマークの赤いタイをタラリンコと垂らしているトランプ氏も、この時ばかりはブルックス・ブラザーズの赤と紺のストライプの配色のナンバー3のレップタイ(ブルックス・ブラザーズのレジメンタルタイの名称)。対するバイデン氏もこの日はさらにコンサバに気合を入れて、ブルックス・ブラザーズの青に銀のストライプの配色のナンバー5のレップタイ。さらには司会を務めたCNNのアンカーまでもが、ブルックス・ブラザーズのエンジにブルー系のストライプの配色のナンバー3のレップタイを締めて中継に臨んでいた。

テレビ討論会で対決したトランプ氏(左)とバイデン氏(9月29日)=ロイター

ご存じかもしれないが、レジメンタルタイには英国式と米国式があり、英国式は自分から見てストライプが右下がりのカタカナのノの字で、米国式はその逆でストライプが右肩から左肩下のリバースと呼ばれている。アメリカントラッドのブルックス・ブラザーズのレップタイが後者のリバースである。

これには、剣を右手に持って掲げた時に剣先とストライプが一直線になって心臓までつながるという勇ましいいわれがあるらしい。

また、大統領をはじめアイビーリーグ出身のエスタブリッシュ層は、レジメンタルタイは締めても、公の場では絶対にボタンダウンシャツはスーツに合わせて着ない。これも諸説あるが、ケネディ大統領が立候補した時に、自分がアイビーリーグ出身のエリートであるということを伏せるために、あえてボタンダウンシャツを着ないで演説をした戦略から定着したという。

カジュアルなスタイルのバイデン氏(右)とジル夫人(2013年1月)=ロイター

ちなみに筆者は昔、メイドインUSAのボタンダウンシャツで人気がある某アメリカントラッドの老舗シャツブランドの社長をインタビューしたことがあるのだが、本国での一番の売れ筋はワイドカラーのドレスシャツで、オックスフォードのボタンダウンシャツはアメリカよりも日本で売れるのだそうだ。「なんで日本人はこんなにボタンダウンシャツが好きなんだ?」と逆に質問されてしまった。

そういや、アメリカ大統領選のニュースを見ていたら、オハイオ州の自動車修理工のフランク・ビガリーノさん(仮名)が「トランプは有言実行の男で、周囲の顔色を気にする小粒の政治家とは違う。俺は彼に一票入れたぜ」と言っていましたが、昔、原宿の「プロペラ」や渋谷の「バックドロップ」の地下1階で売ってたようなイイカンジに色落ちしたカーハートのコットンダック地のワークベストを着ていたなぁ。全然カンケーないけど。

いで あつし
1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られライター、コラムニストとしてメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「ビギン」、「MEN’S EX」、JR東海道新幹線グリーン車内誌「ひととき」で連載コラムを持つ。

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