一方、バイデン氏のファッションはまさに絵に描いたようなコンサバスタイルである。スーツはジャストサイズで、ラペルにはハンドステッチが入り、肩のラインも緩やかなソフトな仕立て。上着の前ボタンをちゃんと、立つときには留めて、座る時は開けている。Vゾーンも、オーソドックスな白いレギュラーカラーシャツにプレーンノットで締めたレジメンタルや無地のブルー系のタイ。そして上品なオジサマ感のある清潔極まりないシルバーグレイのヘアスタイル。

退役軍人をたたえる式典に出席したバイデン氏(右)とジル夫人=ロイター

スキのないコンサバ、面白みに欠ける印象

ちなみに、大統領選の最中にアメリカのヴォーグマガジンのインスタグラムに上がっていた、バイデン氏のオフショット写真を見ると、胸元にゴールデンフリース(ブルックス・ブラザーズの羊のシンボルマーク)が付いたブルックス・ブラザーズのネイビーポロシャツの裾をタックインしてチノパンツという、なんともコンサバなカジュアルスタイルでステイホームしている。書斎と思われる部屋の壁にはワークブーツのイラスト画が飾られていたりして、まるでファッションイラストレーターの綿谷寛氏が描く古き良きアメリカの世界である。

さあ、どっちのファッションが好きですか、と聞かれたら、これはもう間違いなくコンサバなバイデン氏に決まっている。と思いきや、なんか、あまりにコンサバすぎちゃって、ちょっとつまんないのよね。

トランプ氏が大統領に就任した当時は「なんだ、あの下品なスーツの着こなしは! アメリカの大統領がすべき格好か!」と、ファッション評論家をはじめ皆さん、全員が全員、眉をしかめて酷評していた。しかし、おかしなもので4年も見ているとすっかり見慣れてしまって「あれはあれでトランプ氏らしくていい。むしろ誰にもまねできない、お洒落(しゃれ)なファッションスタイルだ」みたいな。この4年間でそんなふうに思えるようにまでなった。

大事な場面では上着のボタンを留める?ホワイトハウスでのトランプ大統領(中)とメラニア夫人(右)=ロイター

思うに、名コラムニストで消しゴム版画家の故・ナンシー関氏が、「全ての日本人の好き嫌いの根底にはヤンキーのセンスが流れている」だったか、そんな名言を残しているが、まさにそれだ。確かにナンシー氏の指摘する通り、世間一般に広くはやるモノとは、ダサいというか、あか抜けないというか、ヤンキーセンス的なモノである。これは言い換えれば、どんなにお洒落なモノもヤンキーにまで浸透してまったらおしまいということでもある。

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討論会のネクタイが映した「アメリカらしさ」
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