ブランドを磨き直し 知的なイメージ押し出す
ファン層を育てるうえで効果が大きかったのは、メガハウスが取り組んできたビギナー層への働きかけだ。2005年には商品に攻略書の同梱をスタート。「自力では6面をそろえられず、遊びをやめてしまった人たちは少なくない。丁寧にそろえ方を手ほどきすることによって、再チャレンジにつなげたい」(藤島氏)。40周年の今年は動画も公開して、リベンジ組への門戸をさらに広げた。「そろえられるようになると、次は知り合いに見せたいとか、タイムを縮めたいという気持ちが強まる」と、継続プレーへの広がりを期待する。
40周年をにらんだ18年にはシリーズのリブランディングに踏み切った。それまでは商品ごとに異なった形状・デザインだった商品パッケージを統一。「大人が買いやすい、落ち着いた見え具合のパッケージに刷新した」(藤島氏)。いかにも「おもちゃ」といったパッケージが姿を消し、プレゼントや送別記念品といった大人マーケットでの需要が広がった。18年にはオリジナルデザインのルービックキューブを注文できる「ルービックマイデザイン」のサービスを開始。コレクターのニーズにもこたえた。

新たなブランディングのテーマは「正統性」や「原点回帰」のようだ。考案したエルノー・ルービック氏の母国にちなんで、ハンガリー大使館と連携して「ルービックキューブ40周年展」をハンガリー文化センター(東京・港)で開催しているのも、その一例だ。「名前の由来やハンガリーとのつながりがあまり知られていないところがあるので、あらためてアピールしたいと考えた」という。
考案者のルービック氏が建築学の研究者で、大学で教える3次元幾何学の教材として使ったのが始まりという「原点」にも着目。アカデミックで知的なイメージを生かしたブランディングにも取り組んでいる。ルービックキューブ1600個を使用したルービック氏の肖像画を展示した40周年展も考案者にさかのぼって、知性と結び付けるストーリーづくりの試みと映る。「類似商品との違いを示すうえでも、知的なオリジンを印象付けるのは重要」(藤島氏)なようだ。
脳の前頭葉を刺激するという分析結果を得て、「地頭力」を育む知育玩具と位置づけたのは、単なる「おもちゃ」の先を意識した戦略の表れだろう。思考力や表現力を評価する方針に変わろうとしている教育に役立つという方向でのプロモーションは、祖父母や保護者の購入マインドに働きかける。
家ごもりが続くと、気持ちがささくれだってきがちだが、ルービックキューブの全面がきれいにそろうと、達成感があるのに加え、「何だか心持ちが整うところもある」(藤島氏)。こうした一種のカタルシス(浄化)作用が得られるのも、ウィズコロナ時代らしい遊び甲斐(がい)といえるだろう。競技化、知育に続く、次なるテーマはメンタルの「整い」かもしれない。時代の移り変わりに応じて、タイムリーな新タイプを企画して、人気を保ってきただけに、足元の歴史的な様変わりを、次の新商品に映し込むプランは徐々に面がそろい始めているはずだ。