子どもにもキャッシュレス 家庭のルール決めが大切
2019年10月の消費増税をきっかけに、全国的に「キャッシュレス化」が進みました。それまで現金主義だった大人は、お金の減り具合が見えにくくなり、キャッシュレス払いの管理に四苦八苦という人もいたようです。このキャッシュレス化は子どもの小遣いなどにも波及しており、「いかに子どもにキャッシュレスとの付き合い方を教えるか」ということが話題になることが多くなりました。
お金とうまく付き合えるようになるには、金銭教育が大切です。そして金銭感覚を育てるためには、「現金を管理して覚えていく」と考える大人が大多数です。ですが、それは本当でしょうか。
現金主義の親のもとで育った子どもは、目の前で現金が使われることを見ているので、現金があることでお金や物の価値を測る場合が多いようです。一方、親がキャッシュレス決済に慣れている家庭で育った子どもは、お金や物の値段、その価値を数字で測ることに比較的慣れているようです。金銭教育費はどちらでなくてはいけないという先入観は、持たなくてもよさそうです。
とはいえ、ある程度お金を使うことができる年齢になっていても、今はまだ現金中心という子が多いはずです。将来を見据えてキャッシュレス決済を教えるのであれば、どのように教えていくとよいでしょうか。
子どもが使えるキャッシュレス決済の代表的なものは、なんといっても交通系ICカードです。交通費だけではなく、幅広い店で買い物にも使えるこのカードは、気軽なキャッシュレス決済の一つです。
スマホアプリの「〇〇Pay」の多くも、年齢制限がなく、子どもも使えます。クレジットカードブランドのついた「ブランドプリペイドカード」も、子どもが使えるものがいくつかあります。選択肢が増えたいまでは「子どもにはどれを使わせたらよいのだろう」と悩むことも多いかもしれません。
キャッシュレス決済を身近に感じてもらうには、やはり子どもがよくお金を使うシーンにあったものを選択するとよいと思います。
例えば、電車に乗って通学しているとか、塾や習い事に通っている場合は、交通系ICカードがよいと思います。時々コンビニやスーパーでお菓子や飲み物を買う程度で、スマホを持っているのであれば、スマホアプリの「〇〇Pay」でもよいでしょう。
また、小遣いでゲーム課金をしている、ネットショッピングをするようになったという子には、クレジットカードの決済システムで使えるブランドプリカが合っていると思います。親のカードで立て替えればいいという考え方もあるでしょうが、子どもの手持ちがないときに支払いを後回しにするなど、親に借金をしてしまうようなお金の使い方になるケースもあります。金銭感覚を身につけるという意味では、その子どもの専用カードを作るほうがよいでしょう。
ネットショッピングであれば「振替伝票で後払い」「代引き」という手段もありますが、手数料がかかる場合が多いですし、親にお金を借りがちになるケースも多いようです。できるだけ即時に支払えた方が、子どもは自分のお金の減り具合を実感できるはずです。
このように子どもが使えるキャッシュレス決済は複数あるのですが、どこで、どんなふうに使っているのかなど、気になることはたくさんあるはずです。そこで、子どもがキャッシュレス決済を使うにあたり、ご家庭なりのルールを作りましょう。そのルールの例を紹介します。
1、どのような時にどのお店で、どのように使うかを教える
慣れるまでは子どもも「どこで、どう使うのか」がわからないでしょう。「塾に行くときにコンビニでバーコードをかざしておやつや飲み物を買う」「ゲームで課金するときはこの番号を入れる」など、使う場面、使い方を教えてあげましょう。これは小中学生に限らず、高校生でもちゅうちょすることのようです。
2、利用履歴を親子で確認する
お金の減り具合が見えにくいと感じさせるキャッシュレス決済ですから、きちんと見える工夫をしましょう。その一つとして、親子一緒に利用履歴を確認しましょう。スマホ決済はスマホのアプリで履歴が見られますし、交通系ICはスマホアプリの「ICカードリーダー」のアプリを利用すると簡単に確認できます。ブランドプリカは、カード専用サイトのマイページから確認できます。親は子どものお金の使い方が分かり安心できますし、子どもには自分がどのようにお金を使ったかの確認の仕方を覚える時間になります。はじめのうちは週に1度程度、慣れてきたら月に1度程度確認し、お金の使い方について話し合ってみるのもよいでしょう。
3、チャージの仕方を教える
利用できる金額はチャージしてある金額。決して親の銀行口座やクレジットカードから簡単にチャージができるような環境はつくらないようにしましょう。その上で、チャージはどのようにするのかを決めておきましょう。子どもの小遣いからその都度チャージする、子どもの銀行口座からチャージするなど、方法は様々です。チャージするお金が小遣いなのか、家計から負担するのかもその支出の性質から決めておくとよいでしょう。上級者になると、役割により、キャッシュレス決済の種類を変えるという方法もあります。
4、やってはいけないことを伝える
お金が目に見えないと、つい、友達におごったりしたくなる子もいます。そのようなことがないよう、してはいけないこともきちんと伝えておきましょう。スマホやカードは友達に貸してはいけない、おごりおごられもダメ、もちろんお金を送金して貸し借りなどもダメ。そのほか、ご家庭で禁止したいことはきちんと伝え、履歴を確認するときにルールを守っているかの確認もしましょう。
キャッシュレス決済は、現金を使わせるよりも気を使うところが多いかもしれません。ですが、今では新型コロナウイルスの影響で感染予防の意味でもキャッシュレス決済が好まれる傾向です。お子さんが成長と共に金銭感覚を養いながら、キャッシュレス決済を使いこなせるようになるよう、親子一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか。
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、これまでの相談件数は2万3000件を突破。著書に『はじめての人のための3000円投資生活』『年収200万円からの貯金生活宣言』など。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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