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メダマグモは「耳」で勝負 背後の獲物とらえる聴覚

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

メダマグモに名前をつけた人は、その巨大な目玉に感銘を受けたのだろう。暗闇の中で獲物を見つけるモンスターのような目だ。

ところが、夜行性のこのクモは、目以外にも優れた感覚を持っていることが判明した。聴覚だ。2020年10月29日付で学術誌「Current Biology」に発表された最新の研究によると、メダマグモ科の一種、「Deinopis spinosa(D. spinosa)」は約2メートル離れた場所から、幅広い周波数の音を聞き取ることができるという。しかも、脚に備わった感覚器官によってだ。

メダマグモの仲間は、前方の脚に小さな網を構え、近づいた獲物に網をかぶせるようにして捕らえる。ところが、米国南東部に生息するこのメダマグモ「D. spinosa」は、植物にぶら下がった体勢から、体を後ろにひねり上げて、空中にいる獲物を捕らえることができるのだ。

後方にいる獲物に対し、どうやってこのような軽業を行えるのか。興味を持った米コーネル大学の神経生物学の博士研究員ジェイ・スタフストロム氏は、以前、ある実験を行った。クモの目をシリコンで覆ってみたところ、彼らはそれでも飛んでいる虫を捕らえることができた。この結果から、メダマグモが虫の音を聞いているのではないかという仮説が浮かんだ。

クモには、通常の意味での耳はない。しかし、ハエトリグモやハシリグモ、そして今回新たにわかったメダマグモなどでは、脚にある感覚受容器で音を聞いている可能性がある。この受容器が耳のような働きをし、音波を受け取って神経系を介して脳に信号を伝える。

メダマグモがすごいのは、非常に優れた聴覚を持っていることだと、スタフストロム氏は話す。ハエトリグモをはじめとする他のクモは、周波数の高い音を聞き取ることができない。一方、メダマグモは昆虫の翅音(はおと)のような低周波数の音も、捕食者である鳥の鳴き声のような高周波数の音も知覚することができるという。

クモのような単純な生物で、こうした卓越した聴覚が発見されたことは、聴覚という感覚がどう進化してきたのかを探る手掛かりになる。そう語るのは、カナダのトロント大学の感覚生物学者、セン・シバリンゲム氏だ。同氏は今回の研究には関わっていない。

「神経が少なく、あまり複雑でない動物の脳において、感覚情報がどのように処理されているのか。そして、それが個体の行動や意思決定にどのような影響を及ぼすのか。こうした点を知ることにより、私たちを含め、あらゆる生物の脳における情報処理プロセス、そして脳の構造についての理解が深まるはずです」

脚の「鼓膜」で音を聞く

スタフストロム氏らは、実験室でクモの脳、および切断した脚に、ごく小さな電極を埋め込んだ。脚は切り離されてから1時間程度までは音に反応する。脚の先端付近(せき節)の内側には、振動を知覚する器官がある。研究者たちは、これを使って音も聞いているのではないかと考えた。

そこでチームは、クモから約2メートル離れた場所で様々な周波数の音を発した。電極から得られたデータを見ると、周波数の低い音においても高い音においても、クモの脳と脚先にある器官が活動することがわかった。脚先の器官が働かないようにすると、クモはそれほど強く音に反応しなくなったことから、この器官は鼓膜のような役割を果たしているのではないかと考えられる。

実験結果を確かめるため、研究チームは米フロリダ州でさらに実験を行った。実験室で使用したのと同じ音を、夜間、野生のメダマグモに2メートルの距離から聞かせた。

結果は同じだった。クモは昆虫の翅音に似た低周波数の音を聞いた時には網を広げ、鳥の声に似た高周波数の音を聞いた時にはじっとしていた。こうした反応は、クモが単に巣にかかった獲物の振動を感じているのではなく、音を聞いているのだという結論を補強するものだと、今回の論文の著者たちは言う。

「この研究の非常に面白い点は、行動実験と神経生理学とを組み合わせたところにあります」と、シバリンゲム氏は話す。

「クモの脳の活動を計測するのは、恐ろしく難しいことで知られています」。つまり「クモがどのように感覚情報を処理しているのか、クモにとってどのような情報が重要なのかについては、いまだによくわかっていないことが多いのです。しかし、こうした研究によって知見が増えつつあります」

技術の発展にも貢献?

スタフストロム氏が言うには、今回の発見は超高感度マイクなど、音を検出するための技術の発展にも貢献するかもしれない。

メダマグモが「こんなに変わったことを、すごくうまくできるように進化した」おかげで、「何らかの形で、私たちがそれを模倣できるかもしれません」

たとえばスタフストロム氏は、センサー付きの8本の「脚」を備えた、クモ型のマイクやスマートスピーカーを思い描いている。「音がどの方向からどのくらいの速さでやって来ているのか、そしてどの方向に向かうのか、非常に精度の高い計算をすることができるような」ものという。こうした機械があれば、多くの会話が交わされているところで、特定の声を拾うことができるようになるかもしれない。

「メダマグモについて調べていけば、情報の宝の山が見つかるのではないかと考えています」

(文 LIZ LANGLEY、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年11月3日付の記事を再構成]

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