自分の損得のための転職だと言ってしまっていないか

「ぜひ御社で働かせてください。こんな素晴らしい会社があるなんて知りませんでした」

そう熱弁すればするほど、その求職者が合格する確率は下がってゆきます。

理由はなぜか。

結論を一言で示すなら、それは主語が自分になってしまっているからです。私にとって御社は価値がある、ということを言っているだけなのです。

コロナショックのように大きな変化があると、どうしても人は不安を感じやすくなります。そして身を守るために新しい行動をとることになります。

その際にはもちろん「自分」あるいは近しい人を守るために行動します。それが転職活動となり、新しく活躍できる場を探すきっかけになるわけです。

たとえばこれまではメーカーで営業職として勤務していたとします。しかしコロナショックによって新規営業先が激減し、個人としての業績が悪化したので評価が下がりました。また営業のための見込み先そのものが減ったのと、見込み先への物理的な営業訪問がなくなったので、残業時間が減り、給与の手取りが減りました。評価が下がった結果は夏の賞与減に反映され、さらに会社全体の業績悪化により、冬の賞与は昨年対比で8割減少という話が流れてきています。こんな状況では、年次的に来年なるはずだった係長昇進もなくなる可能性が高まっています。今年の年収はすでに昨年対比でかなり下がり、来年はそれよりも下がる可能性が高いと見込まれ、家族との話も暗くなってしまいました。

自分の生活を守るため、あるいは家族の生活を守るため、これまで想像もしていなかった転職活動に飛び込む決意がようやく生まれます。

さて、そうして転職活動をしてみると、意外にコロナショックの中でも伸びているという会社があります。具体的に話を聞くほどに、先行き暗い今の会社を離れて移りたい、という思いが高まります。やがて「ぜひ御社で!」となるわけですが、その会社の経営者は何を考えているでしょう。

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転職先に価値をもたらせるか
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