2020/11/30

男女両方の墓から見つかる副葬品

18年の発見で弾みがついたハース氏のチームはその後、過去に南北米大陸で行われた古代の狩猟採集民に関する報告を検証した。過去の調査でも、女性の墓で同様の狩猟用石器が発掘されていたケースは多かったが、結果は必ずしも明確ではなかった。性別が確定されていない事例も含まれていた。また、墓が荒らされた跡があるなど、石器と遺骨が同時に埋葬されたかどうかが不明瞭な場合もあった。さらには、墓で見つかった尖頭器が、被葬者を殺した武器だった可能性があるケースもあった。

過去のデータを見直した結果、性別が明らかな被葬者429例のうち、27例が狩猟道具とともに埋められていたことがわかった。そのうち11例は女性(新たに特定された遺骨を含む)、16例は男性だった。ハース氏によれば、男女双方の墓で多くの不確定要素(埋葬状況や性別の特定など)があった。そこで、不確実な事例を除いてみても、同じように男女ともに狩猟道具と一緒に埋葬されていた。

「男性だけが狩猟をしていたならば、こうしたパターンはまず考えられません」とハース氏は言う。

9000年前に埋葬されたこの女性がハンターだったという見解に、アリゾナ州立大学のヒル氏は完全に納得しているわけではない。狩猟道具などの副葬品は、象徴的あるいは宗教的な意味で埋められたとも考えられると氏は指摘する。

新たに発見された石器は、埋葬された人物の所有物だったのだろうか? スターリング氏は、そうした疑問そのものに異議を唱える。「こうした副葬品が男性の遺骨とともに見つかったときには、こんな疑問が浮かぶことはありません」と氏は言う。「そんな疑問を抱くのは、男女の役割に関する通説にそぐわない場合だけです」

ゲラー氏も、「女性が狩猟道具とともに葬られている理由をひねり出そうとして、頭の体操をしている人はたくさんいます」と同意する。

9000年前の墓で発見された石器一式は多岐にわたっていた。尖頭器のように、作るのが難しい貴重な石器もあれば、岩を砕けば簡単に作れる石の薄片など、ありふれたものもあった。この点から、石器はいわゆる供え物ではなく、故人が生前使用していた品だと示唆されるとハース氏は主張している。また、米大陸全体で石器と一緒に埋葬された女性がたくさん発見されていることからも、故人が使っていたものとする説には説得力があるとスターリング氏は付け加える。

ゲラー氏にとって、この議論は現代において重要な意味合いを持っている。「今の社会には、男女の役割に極端な格差が存在し続けています。もしそれらが生物学的な違いに基づいていると見なせるのなら、極端な格差を正当化できてしまうでしょう」と氏は言う。「でも私にとってそれは危険で、まったく根拠のないことです」

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年11月9日付]