日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/11/28

FWSのこの主張は疑わしいと、多くのオオカミ研究者や保護団体は考える。例えば、10月29日付で学術誌「BioScience」に発表された論文は、オオカミのようにかつて広範囲に生息していた野生動物の保護では、生息地と個体数という単純な要素だけでなく、環境的な要因や生物多様性なども加えた複合的な判断が成功のカギだと指摘する。同時に、生息地モデルに基づいて、米国北東部、南西部、太平洋岸北西部の一部を含む17の州でオオカミが繁殖できることを示した。

「FWSによる今回の措置は、オオカミの復活を妨げるものです。生息に適し、人が住んでいない場所がまだ十分にあるにもかかわらずです」と、オオカミの保護団体のひとつであるディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフの理事長兼最高経営責任者(CEO)で、かつてFWSの局長であったジェイミー・ラパポート・クラーク氏は異議を唱える。彼らは、コロラド州西部の6万8000平方キロメートル(北海道の面積の8割強に相当)を超える公有地を、オオカミが繁殖できる、またそうさせるべき場所の1つと主張している。

コロラド州でオオカミ再導入の住民投票

コロラド州にオオカミを戻すべきかという議論は何年も続いており、11月3日に住民投票が行われた。賛成と反対が拮抗しており、現時点(日本時間4日)では結果がまだ確定していないが、議案が可決されれば、野生生物保護官が23年の末までにコロラド州西部にオオカミを放つことが義務付けられる。放たれた群れは、いつかはロッキー山脈の北側やニューメキシコ州など、ほかの地域に住むオオカミたちとつながるかもしれない。

フィリップス氏のような保護活動家やオオカミを応援する人びとの多くが、この取り組みがオオカミの完全復活に役立つと期待している。

「FWSはオオカミに対する最低限の義務は終えたとしていますが、それはコロラド州西部でこの種が存続可能な数にまで増えてこそ、強い説得力を持つでしょう」とフィリップス氏は言う。

観測用飛行機から1匹のオオカミを追跡する科学者ら。イエローストーン国立公園で。専門家は、麻酔薬の入った矢で動物を動けなくし、調査した後に無傷で解放する(PHOTOGRAPHS BY RONAN DONOVAN)

国としての保護がなくなっても、コロラド州のほかワシントン州、カリフォルニア州、ネバダ州などいくつかの州は、オオカミを絶滅が危惧される種と考えている。

「州などの野生動物保護機関には、長年にわたり、州内の野生動物の管理に成功してきた実績があります」と、FWSの高官は10月29日の会見で述べた。「シカやシチメンチョウ、カワウソなど、狩猟の対象になる種もならない種も、たくさんの種がこれまで絶滅の危機にひんし、十分な数まで復活しました」

(文 CHRISTINE PETERSON、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年11月4日付]

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