米国の絶滅危惧種法(ESA)によれば、「生息域の全部あるいは重要な部分で」絶滅が危惧されるかそうなる可能性が高い種は、絶滅危惧種リストに記載することになっている。オオカミは全体として過去の生息範囲の20%にしかおらず、十分な回復にはほど遠いと保護派は主張する。
「オオカミがかつての生息域の80%から姿を消したことを、どうして軽視できるでしょうか」と言うのは、モンタナ州上院議員で、数十年にわたってオオカミを元の生息地に戻す活動に取り組んでいるマイク・フィリップス氏だ。

オオカミはどこで生きるべきか
オオカミは、かつて北はアラスカ州から南はメキシコまで、東はメーン州から西はカリフォルニア州まで、北米大陸のほぼ全域を歩き回っていた。しかし、全国的に行われた駆除作戦のため、1900年代初頭までに米国本土ではほぼ消え去り、カナダとの国境沿いにわずかな数がばらばらに残るだけになった。1970年代に、連邦政府はオオカミを絶滅危惧種に指定した。
1990年代にオオカミを元の生息地に再導入する取り組みが成功した結果、ロッキー山脈の北側一帯で数が増えた。これにカナダから移動してきたオオカミが加わり、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州のそれぞれで群れができるようになった。
五大湖地方では自力で少しずつ回復していたところに、ミネソタ州とカナダに生き残っていた群れが加わって増加した。なお、アラスカ州ではオオカミの数は以前から安定しており、絶滅の危惧やその危険があるとして保護されたことはない。

米国において、オオカミほど多くの称賛と怒りを浴びせられている動物はそういない。保護派は、オオカミがシカの増えすぎを防ぐなど、生態系で重要な役割を果たしていると指摘する。一方で農業団体や一部の狩猟者団体は、オオカミにヒツジやウシを殺され、狩猟の対象になる鳥獣が食べられると非難する。
今日の議論の主な論点は、オオカミがどこで生きるべきかということだ。FWSの高官は10月29日の会見で、オオカミがさらに分布を広げるのに、連邦による絶滅危惧種の指定は必要ないと述べた。