
米国魚類野生生物局(FWS)は2020年10月29日、オオカミ(Canis lupus)は米国本土ではもはや絶滅危惧種ではないと発表した。保護派はこの決定を時期尚早と考えており、訴訟が急増しそうだ。
19年3月にFWSがオオカミを絶滅危惧種のリストから外す手続きを始めた際、その個体数はハワイとアラスカを除く米48州で6000匹ほどで、「現在の生息域の全域で安定的かつ健康的」との見方を示していた。
「45年以上にわたり絶滅危惧種としてオオカミを保護をしてきた結果、回復のためのすべての目標を達成しています」と、デービッド・バーンハート内務長官は10月29日のプレスリリースで述べた。「本日の発表は、連邦法で定められた特定の要素に基づいて、この種が絶滅危惧種でも、そうなる危険のある種でもないという判断を単純に反映するものです」
亜種のメキシコオオカミ(Canis lupus baileyi)と近縁種のアメリカアカオオカミ(Canis rufus、オオカミの亜種という説もある)は、今回の決定の影響を受けない。どちらも野生ではごくわずかしか生存しておらず、今も絶滅危惧種に指定されている。
保護団体は、オオカミはかつての生息域の多くでまだ回復の途上であり、リストから外すのは早すぎると主張している。そればかりか、国としてのまとまった戦略もなく、この種の管理を州に移管することは有害だと、環境法を専門とする法律事務所アースジャスティスの弁護士、クリステン・ボイルズ氏は訴える。同事務所はこの決定について訴訟を起こす予定だ。
「19世紀末から20世紀初頭に人間によって殺される前に生息していた土地にオオカミが戻ってくることを目標とするなら、国としての回復計画がなければ達成は不可能です」とボイルズ氏は言う。「そして国としての保護なしに、国の回復計画を立てることはできません」