新iPad Air、上位喰う中位機 イラストや手書きに強み
戸田覚の最新デジタル機器レビュー
今回は、アップルが2020年10月に発売したタブレットの新製品「iPad Air」の第4世代、通称「iPad Air 4」をレビューする。これまでにiPadを買ったことがない方にも、久しぶりに買い替える方にもわかりやすく説明していくので、じっくりとお読みいただきたい。
「上位モデルに近い中級モデル」へ
10.9インチディスプレーを搭載するiPad Air 4は、ひとことで言うなら中級モデルだ。上位モデルには、より大きなディスプレーを搭載する「iPad Pro」がある。しかし公式オンラインストアの価格が8万4800円(税別、以下同)からと、6万2800円からのiPad Air 4に比べて3割以上高い。また下位モデルには「iPad(第8世代)」とコンパクトな「iPad mini(第5世代)」がある。iPad(第8世代)はiPad Air 4と同時に発表になり、一足早く9月から発売されたモデルで、ディスプレーなど一部を除けば過不足ない性能を備えており、価格も手ごろだ。iPad miniは19年3月発売と、発売から時間がたっている。
これまでiPad Airシリーズは、iPad(第8世代)やiPad miniに近い外観だった。ディスプレー上下の額縁が太く、下縁の中央にホームボタンが付いていた。スマートフォンのiPhone 7やiPhone 8でもおなじみのスタイルだ。
これに対してiPad Air 4は、上位モデルのiPad Proに近い外観にデザインを一新し、額縁が細いスタイルになった。つまり「下位モデルと近い中級モデル」から「上位モデルに近い中級モデル」に、位置づけが変わったわけだ。一言で言うなら、これがiPad Air4の最大のポイントだ。
端子は汎用性が高い新タイプに
充電やパソコンとの接続に使う端子も、アップルがiPhoneで使い続けている独自規格の「Lightning」から、汎用性が高い「USB Type-C(以下USB-C)」に変わった。iPad Proと同じ仕様になったわけだ。
USB-C端子はLightningに比べて様々な機器に広く使われているので、使い勝手はいい。最新のノートパソコンなどで使われている充電器が使用できるし、Androidスマホ向けの充電器も流用可能だ。
USB-C対応の充電アダプターは、サードパーティーからいろいろな製品が登場しており、価格もこなれている。Lightning端子より使いやすいことは間違いない。
iPad Air 4でもう1つ見逃せないのが、指紋センサーの搭載だ。アップルでは指紋センサーを「Touch ID」と呼ぶ。本体の側面右上にある電源ボタンに、指紋センサーを内蔵している。そのため電源ボタンを押してスタンバイ状態から復帰する際、同時にログインもできるので非常に使い勝手がいい。コロナ禍でマスクをする機会が多いため、顔認証の「Face ID」しか利用できないiPad Proに対して大きなアドバンテージとなる。
カラーは5色、パステルな色調も用意
iPad Air 4は中級モデルらしく、幅広いユーザーがターゲット。そのため本体カラーは、なんと5色も用意している(iPad Proは2色)。下の写真で紹介したスカイブルーやグリーンは、パステルな色調でとても雰囲気がいい。主に仕事で使うなら、落ちついたスペースグレイやシルバーを選ぶといいだろう。
前述のようにiPad Air 4の価格は6万2800円からと、比較的手ごろにもかかわらず、CPU(中央演算処理装置)は最新の「A14 Bionic」を採用している。最新スマホ「iPhone 12」と同じCPUで、上位モデルのiPad Proが搭載する「A12X Bionic」に勝るとも劣らない性能を発揮する。
つまりiPad Air 4は中位モデルながら、性能は上位モデルとほとんど変わらない。3~4年前のiPadから買い替えると明らかに快適に使えるだろう。また、これから3~4年使い込んでも、当面は「快適」と思えるはずだ。長く使えるスタンダードモデルとして、素晴らしい構成といえる。
アクセサリーはiPad Pro用を使う
iPad Air 4のアクセサリーは、iPad Proと基本的に共通だ。ディスプレーに文字や図形を直接書き込める専用ペン「Apple Pencil」は、第2世代の新しいタイプとなった。本体に取りつけるだけでペアリングや充電ができる。書き味も文句なしだ。
オプションの専用キーボードも「iPad Pro(11インチモデル)」と共通で、iPad本体に磁石で取りつけて、宙に浮かすような形で利用する「Magic Keyboard」が利用できる。
アクセサリーが上位モデルと同じなので、性能や使い勝手は優れている。ただし、下位モデル向けのアクセサリーに比べて価格が若干高いことは頭の片隅に留めておきたい。例えば、Apple Pencilの第1世代は1万800円だが、第2世代は1万4500円となる。
iPadのどのモデルを購入するか迷っている方には、iPad Air 4をぜひお薦めしたい。下位モデルのiPad(第8世代)のほうが価格は手ごろだが、数年間使い続けることを考えると、iPad Air 4のほうがより満足できる可能性が高い。ディスプレーの画質も差異が大きい。特にApple Pencilでイラストなど手書きする方は、より精緻な描画ができるiPad Air 4を選ぶべきだろう。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は150点以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
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