4段オートマで一気に加速 オランダ発の電動自転車電動パーソナルモビリティーの選び方 第2回

ブーストボタンで一気にアシスト

といっても、決してVanMoof S3/X3が退屈な自転車というわけではない。アシストが効く速度域に限れば、むしろダイレクトで自然な感覚で加速でき、スムーズで爽快な走りを楽しめる。さらに刺激的なのが「ターボブースト」だ。右ハンドルにあるブーストボタンを押している間は一時的にアシスト量が増え、一気にアシスト上限の時速24キロメートル近くまで加速できる。病みつきになるほど爽快な機能だ。急坂を上るときなど、力が必要なときにも活躍する。

試乗の後半は「S3」に乗り換えてみた。モーターやバッテリーなどは共通なので基本的な走りは変わらないが、こちらはフレームが大きくスピードを出したときの安定感も増すため、よりスポーティーな感覚が強い。個人的には、買い物などで近場を走り回るなら「X3」、通勤などで毎日10キロメートル単位の距離を走るなら「S3」を選ぶだろう。

シンプルなデザインだが、前後ライトや警笛、泥よけなど必要な機能はきちんと装備している。「S3」「X3」とも前カゴやリアキャリアもオプションで用意されている

スタイリッシュで走りも楽しいVanMoof S3/X3だが、人によって困るのが充電だ。デザインを優先してバッテリーをフレームに内蔵した結果、バッテリーだけを取り外せない。このため充電の際は、本体に直接コードをつながなくてはならない。マンション住まいだとこれがネックになる。充電のたびに自転車をエレベーターに乗せ、自宅前まで運ぶ必要があるためだ。戸建てなどで充電場所に困らない方にとってはあまり問題はないだろう。

この「マンションの充電問題」は、多くの電動モビリティーに共通の悩み。駐輪場に共有の電源を用意するなど、充電環境が整備されればもっと電動モビリティーに手を出しやすくなるのに、と思う。

VanMoof S3/X3が1回の充電で走行できる距離は、4段階のアシスト量を最大にした状態で約60キロメートル。毎日10キロメートルの通勤に使うと、ちょうど5日で使い切るくらいの容量だ。

「私は玄関の前に自転車を置いて、自宅内のコンセントから延長ケーブルを使って充電しています」とPRコミュニケーションを担当する浦野誉子氏。満充電にかかる時間は約4時間だから、普段は駐輪場に止め、週に1回だけ玄関前に置いて充電する、という方法もありかもしれない。

強力なモーター、自動変速、そしてアプリ連動と、自転車の概念をアップデートするような工夫が満載のVanMoof S3/X3。このクラスにはスポーツモデルからシティバイクまで他にも魅力的なeバイクが多数あるが、先進性という意味では群を抜いており、未来を感じる乗りものだ。

一方、他の電動モビリティーと比べると、多くが「原付き扱い」としてヘルメット着用や免許携帯といったルールに縛られる中、VanMoof S3/X3はあくまで自転車という枠の中で、最大限に電動の魅力を楽しめる点で実用性が高い。充電の問題さえクリアできれば、現在のルールの中では最も実用的に使える電動モビリティーかもしれない。

(ライター 出雲井 亨)

MONO TRENDY連載記事一覧
注目記事
MONO TRENDY連載記事一覧