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田中角栄氏を語る小長啓一氏

田中角栄氏を語る小長啓一氏

田中角栄の通産大臣、首相時代(1971~74年)に秘書官を務めたことで知られる通産官僚、小長啓一氏。「官僚とはパブリック・サーバント(国への奉仕者)」を自負、角栄氏とともに過ごした小長さんの半生をまとめた『小長啓一の「フロンティアに挑戦」』(村田博文著、財界研究所)が刊行された。角栄氏とのふれ合いを通して送ろうとしたメッセージは何だったのか。小長氏に聞いた。

◇   ◇   ◇

亡くなった後もつなぎ続けた縁

――著書では角栄さんの意外なリーダー像を浮き彫りにされていますね。

「一般的に田中さんは『コンピューター付きブルドーザー』と言われ、強引に物事を進めるイメージがあるかもしれません。確かに強力なリーダーシップを持った政治家であったことは事実です。しかし、田中さんの本当の凄(すご)みは人との縁をつないでいく力です。この力こそ田中さんのリーダーシップ力の源泉であることを、この著書を読んでいただいたみなさんに知っていただければと思います」

「田中さんはいったんつないだ縁をとても大切にしつなぎ続けていく。その人が亡くなった後もです。田中さんが通産大臣だった時、こんなことがありました。ある朝、田中さんが秘書官の私にこう言うのです。『おい、小長君、今日は誰かの葬式がなかったかね』」

「驚きました。確かにお葬式があったのです。しかし、この日は産業構造審議会という重要な会議の日でした。それに出席してもらうスケジュールを組んでいたのです。そう説明すると田中さんは静かにこう話してくれました『これが結婚式なら君の判断は正しい。日を改めて祝意を伝えればいい。だが葬式は別だ。2度目はない』。縁を大事にする人でした」

誠心誠意、人と付き合う

――田中さんは学閥も閨(けい)閥もない。どうやって縁を結んでいかれたのでしょうか。話術やお金の力という人もいますが。

「誠実さです。田中さんは誠心誠意、人と付き合う。そこが素晴らしい人でした。今は情報技術(IT)全盛期、オフィスで隣の人とコミュニケーションをとる場合もメールを使う時代です。もちろんITを活用することはいいですが『ここぞ』という時はバッと裃(かみしも)を脱いで裸になって相手と向き合う、その真剣さと真摯さが相手を動かすのです」

「大蔵大臣に就任した際の『私は高等小学校卒。諸君は全国から集まった秀才』の演説はまさにその典型例でしょう。胸襟を開いて『大臣室の扉はいつでも開けておくから我と思わんものは誰でも訪ねてきてくれ。上司の許可はいらん』と言われれば心が動かない人はいないでしょう」

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