同級生のほとんどが進学する中、大学に行かないことを決めたのも、自身にとっては自然な選択だった。「みんな行くから」という理由で進学しても、うまくいかないのではないか。それまでの経験から「誰もが選ぶ既定路線に行ったら、自分が輝けないと知っていた」という。

体系的な知識はオンラインの講座などで得られるし、新たな人間関係もイベントなどに参加することで築ける。大学教授とのつながりも、高校時代から自分から声をかけてつくっていた。「得られないのは学歴だけじゃないのか」。自分が大学に行くために、お金と時間をかけるのはもったいないと判断した。

人生の脚本・監督・主演

実際、高校卒業後は米マサチューセッツ工科大学(MIT)のオンラインプログラムを受講し、共通の知人を通じて知り合った慶応義塾大学の横田浩一特任教授の自主ゼミにも参加している。横田さんは渋川さんについて「物事を深くロジカルに考え、かなりのスピードでいろんなことにチャレンジできる」と評価。「学生たちとよい刺激を与えあえるのでは」と思い、声をかけたという。

「問い」のような企業ビジョンにひかれるという渋川さん。「それぞれが自分なりに反すうすることで集合知になり、創業者の能力を超えるアウトプットにつながると思うんです」

渋川さんは、高校に入って主体的に行動するようになってから分かったことがある。自分は人生の物語のシナリオライター兼監督兼主演なんだと考えれば、ずっと生きやすくなる。誰と共演し、どんなシーンを撮影するのか、すべて自分次第。失敗やつらい出来事があっても、それは物語の伏線のタネで、いつか必ず回収してよい方向に変えていける。こんな捉え方ができていたら、現状を受け入れるしかないと思い込んでいた中学生の自分にも、もっと違う居場所があったかもしれないと今は思う。

高校卒業後に立ち上げたKakedas(カケダス、東京・渋谷)は今、働く人が適性や能力開発を相談するキャリアコンサルタント(キャリコン)のマッチングサービスを手掛けている。たて続けに事業が頓挫しているときにキャリコンに出会い、救われたことがきっかけだった。会社の掲げるビジョンは「人生の主人公を増やす」。一人ひとりが主役となって輝くのを手伝うのが使命だ。「ずっと人に悩みを相談するのが苦手で、カッコ悪いことだと思っていた」が、今は人に頼ることも大切にしている。

ときに誰かに悩みを打ち明けられるようになったことで心の強さは増した。「笑顔を弾(はじ)けさせる種」をPRする日本ポップコーン協会も運営する渋川さん。世の中のワクワクを増やす冒険の物語はまだまだ続く。

(ライター 高橋恵里)

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