トランプ流しゃべりはどこがすごい 巻き込み力の秘密

トランプ米大統領はツイッターでも平易な言葉遣いを好む
トランプ米大統領はツイッターでも平易な言葉遣いを好む

米大統領選がようやくジョー・バイデン氏の勝利で決着しそうだが、ドナルド・トランプ米大統領とバイデン氏は政策だけではなく、演説のしゃべり方も好対照だ。そもそもどうしてトランプ氏が大統領になれたのかを振り返って考えると、彼の「しゃべり」の効果は小さくなかった気がする。トランプ氏の退場が現実となりそうなことを受けて、トランプ流のしゃべりテクニックを振り返ってみたい。

トランプ流をつかむには、オバマ前大統領と比べるのが分かりやすい。オバマ流の語り口は「上品、冷静、知的」と言い表せるだろう。こうしたトークスタイルは弁護士や上院議員の経験が長かったこととも関係がありそうだ。広島市での演説は多くの人の心を打った。

ざっくりいえば、トランプ流はオバマ流の正反対だ。「上品→下品、冷静→興奮、知的→反知性的」となる。オバマ流は前回の米大統領選の民主党候補者となったヒラリー・クリントン氏や、今回の勝者となったバイデン氏にも通じるところが多い。ちなみに、オバマ、クリントン、バイデンの3氏はいずれもロースクール(法科大学院)を出て、弁護士になっている。慎重に言葉を選ぶことが習い性になっている人たちといえるだろう。

一方のトランプ氏は乱暴にエモーショナルに言葉を操る。語り口はアジテーションに近い。これほど好対照の候補が競い合ったのだから、前回の米大統領選で有権者が分断されたのも無理はない。どちらも「あっちの候補とは肌が合わない」と互いに反発。選挙戦はヒートアップした。激戦となった今回の大統領選にも、この構図はほぼ引き継がれた。

結果的にトランプ氏が勝ったのは、当然、政策や支持母体などの背景が大きく、必ずしも「しゃべりテク」だけのおかげではない。ただ、その大前提を踏まえても、大衆を動かした要因の一つに、彼特有の語り口があったように思える。それらはこれまでの大統領があまり備えていなかったか、もしくはあえて封じ込めていた資質だった。

たとえば、声がやたらと大きい。オバマ氏もクリントン氏も演説ではしっかり声を張っているが、トランプ氏はまた発声の質が異なる。非常識なほどに声が大きいのだ。細かくみると、喉を通って吐き出される空気の量が格段に多い。彼の体型も声の太さに関係している。恰幅(かっぷく)のよい体やどっしりした頭部は、咽頭から出てきた音声を反響させ、増幅させる働きがある。

大きめの頭部に加え、太い首、いかつい肩、すべてが「反響板」となって、彼の声を増幅させ、聴衆に届きやすくしている。だから、単にボリュームが大きいだけではなく、響き渡るような声が生まれる。この声質は説得力や影響力にもつながっているようだ。日本では一般に「野太い」と表現される、彼の声質は、豊かな「反響板」の助けもあって大型スピーカーのように増幅され、影響力を増す仕組みだ。

声の大小は、マイクロフォンをはじめとする音響機器が発達した今では、あまり差が出ないと考える人がいるかもしれないが、それは正しくない。もともと声の小さい人は、機械でボリュームを上げても、か弱いイメージを打ち消しにくい。聞き手に与える声の印象は変えられないのだ。ビジネスシーンでチームを動かすリーダー層はこの点を意識しておいてほしい。体形の構造は変えられないが、声質は磨きようがある。

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