成績はまだ、ワールドカップにやっと出られるぐらいだった。同世代の選手はほとんど大学に進学した。「自分自身は逃げ道を作りたくなかった。成績だけ見たら不安、でも何か根拠のない自信があった。これ一本で生きていこうと決めたんです」

「クライミングは強くなればなるほど壁の中で自由に動けるんです。僕はそこでだれよりも自由に遊びたい、と考えています」

脇目も振らずに没頭すると「トレーニングを積むなかで、できなかったことができるようになる。成長や進化がすごくわかりやすい競技なんです」。そんな喜びを味わえるクライミングとは「達成感をたくさん積み上げられるスポーツ」と熱く語る。

スーツをまとえば「ランクアップ」

2016年に日本人初の世界選手権優勝。17年のワールドカップではボルダリング、スポーツ、リードの3種目複合部門で総合優勝。そして19年のワールドカップ年間総合優勝と快進撃を続けてきた。東京2020オリンピック・パラリンピックで初めて採用されるスポーツクライミングの日本代表にも内定した。

その見せ場が、新型コロナウイルス感染拡大によって21年に延期となった。本来、4月から10月まで続くワールドカップも中止に追い込まれた。

だが、楢崎さんにとって、この逆境はむしろ追い風になるという。「大会がない分、自分を追い込める。いつもよりチャレンジングなトレーニングができているんです」。一番大切にしているのは、自分の目標を忘れないこと。「一番強いのは智亜」と呼ばれる存在になりたい。そのモチベーションで頑張れていると明言する。

技術のレベルアップに加えて、突きつめていきたいことがもう1つある。スポーツクライミングを広く世間に知ってもらうためのアピールだ。初めて見る人には、緊迫感に満ちた会場の空気の中、ゴールに向かう選手のダイナミックな動きや、壁を自在に動き回るテクニックを楽しんでもらいたい。快進撃を続ける楢崎さん自身がクライミングの伝道師。そして、「憧れの存在になって、何億も稼ぎたい(笑)」。

各界から注目される立場となり、多くの人が集まる場でスーツを着る機会がグンと増えた。楢崎さんにとってスーツは身を引き締め、ワンランクアップさせてくれるものだという。「体のラインを美しく見せる、細身のスーツが好きですね」

「勝つためだけに登っていると自分を追い詰めてしまう。クライミングの楽しさを忘れないことが大事だと思います」

今回着用した、クライミングもできるライトグレーのスーツは、伊の名門フラッテリ・タリア・ディ・デルフィノ社の上質なサキソニーを使用。ストレッチ素材を混紡しており、非常に高い運動性をかなえているのが特徴だ。可動域が広く、自由に体が動く。楢崎さんにぴったりのスーツといえる。

「着た瞬間に柔らかに体にフィットしましたね。ブルー系のシャツとタイをコーデしたのも気に入っています。ブルーは登る時によく着る色で、シュッとして見えるから好きです」

クライミングの大会では人に見られることを意識する。髪形をキメて、耳にはピアス。「かっこいい方がいい。それでスポーツクライミングのイメージを向上させたい」

毎回、大会が用意する課題が違い、練習したスキルが100%出し切れるとは限らない難しさ。でも「クライミングって強くなればなるほど、壁の中でより自由に動けるようになる。僕はそこで誰よりも、自由に遊びたいと考えている」。最大の目標が、「歴代で最強の選手」になることだ。

(Men's Fashion編集長 松本和佳)

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