キャリアコンサルタント(キャリコン)紹介のベンチャー企業トップと、自ら立ち上げた日本ポップコーン協会の会長を兼務する22歳がいる。Kakedas(カケダス、東京・渋谷)代表取締役CEO(最高経営責任者)の渋川駿伍(しぶかわ・しゅんご)さん。「どんな仕事をしているのか」と問われれば「社会のワクワクを増やしています」と答える若者の真意は何か。2つの肩書をヒントにさぐる。
人が力を合わせるメカニズムとは
企業や大学、個人向けにキャリコンのマッチングサービスを提供するカケダスは、2020年1月にオンラインキャリア相談サービスを本格スタートした。キャリコンは、働く人の関心や適性を掘り下げながらキャリア形成やスキルアップについて助言する国家資格で、同社への登録数はすでに900人を超えた。働き方の多様化で社会的ニーズが高まっており、9月にはトヨタ自動車の子会社で人材派遣・研修などを手がけるトヨタエンタプライズ(名古屋市)とも業務提携した。渋川さんは「いま日本に足りていない『相談のインフラ』を築きたい」と意気込む。
一方のポップコーン。運命の出会いは高校を卒業した17年に訪れた。「お金を使わない実験」と称して地元の長野県からヒッチハイクの旅に出て、夏の1カ月半ほど国内各地を回った。宿や食事は知り合いや出会った人を頼ったが、自分に返せるものは何もない。歯がゆさを感じているとき、お世話になった和歌山の農家の人が「爆裂種」と呼ばれるポップコーン原料のトウモロコシをくれた。試しに次の宿泊先でポップコーンを作ってみると、子どもからお年寄りまで、その場にいる全員の笑顔が弾(はじ)けた。作る先々で喜ばれ、調べてみると栄養価も高い。「これはすごい」。ポップコーンの魅力を広めようとすぐに設立した協会は、今では約540人の会員が所属。イベント会場でポップコーンを作る活動などに取り組んでいる。渋川さんは会長として人気テレビ番組「マツコの知らない世界」(TBS系)に出演したこともある。
キャリコン紹介ビジネスとポップコーンのPR。何のかかわりもないように思える2つのことが、渋川さんの中では深くつながっている。
小学校の高学年のころ、自分が生きる意味を考えているうちに地球の成り立ちや人類の進化に興味がわき、世界を把握するシンプルなルールを発見してきた数々の偉人にも憧れた。そして自分もそんなひとりになれるのではないかとワクワクした。その延長上にある現在のテーマが「人間が力を合わせて大きな物事を成し遂げるメカニズム」だ。
ある目標に向かって多くの人がスピード感をもって働く会社。ある趣味や関心を共有する人々が自律的に集まり、あまり時間に追われることなく活動する協会。人をつなげる「接着剤」や時間感覚が異なる2つの組織の運営は、いわば「社会実験」なのだという。よりよい組織の仕組みを発見するプロセスは自分をワクワクさせ、その成果は社会もワクワクさせるはず。実は起業家や会長という肩書はしっくりこない。一番近いのは「もしかすると哲学者かも」と口にする。