攻略動画をネット公開

交流サイトの普及もルービックキューブ人気を後押しした。「うまく6面をそろえられるようになった人が腕前を動画で公開してくれるようになってきた」(藤島氏)。あえて手の内を公開して、視聴者にチャレンジを促す人もいて、互いに競い合うような関係が生まれやすい。初心者にとっては早技に見とれるだけではなく、手順を見習うお手本ともなってくれる。片手プレーや目隠しプレーなどの妙技を披露する動画もあって、自分が遊ぶ以外に「他人のプレーぶりを見て楽しむ」という遊び方も生まれている。

目隠し状態で次々にそろえていく競技もある

日本では少子化が進み、おもちゃ市場は総じて苦戦を強いられる環境にある。ルービックキューブも事情は同じはずだが、出荷数は安定している。売れ行きを支える秘密の1つは販売ルートにあるようだ。かつておもちゃは玩具専門店やスーパーが主な販路だった。ただ、これらの売り場は長期的に縮む傾向が続いている。しかし、ルービックキューブは必ずしも旧来のルートに頼り切ってはいない。「近年は書店やインテリア雑貨店などでの取り扱いが広がっていて、販売実績に占める割合も高まってきた」と、藤島氏は販路の広がりを説明する。こうした売り場では大人が自分用に買い求める購入パターンを期待しやすい。

書店やインテリア雑貨店でたくさんのおもちゃが販売されているわけではない。では、なぜルービックキューブだけが特別扱いを受けているのか。主な理由は「立方体の形と、カラフルな色使いがショップの雰囲気になじみ、店舗でのインテリアとしても見栄えがするから」(藤島氏)。立方体がきれいに見える状態でキューブを保持できる台座が用意されているのも店頭での陳列に役立った。スタイリッシュな見え具合や知的なムードはショップの雰囲気を壊さないどころか、それ自体がイメージアップにすらつながり得る。いかにも子ども向けっぽいおもちゃではこうはいかないだろう。

室内で過ごす時間が延びたことに伴い、ルービックキューブを楽しむ機会も広がった。しかし、それだけではない。遊び方を広めるためにメガハウス側が打った、数々の仕掛けも出荷数の飛躍的な増加につながった。たとえば、6面をそろえる手順を明かした、攻略動画のインターネット公開もその一例だ。そろえていく道筋は単一ではなく、いくつかあるが、枝分かれするそれぞれの手順を丁寧に手ほどきしている。「せっかく購入しても、途中で挫折してしまう人は一定の割合で以前から存在していた。従来も商品に『攻略書』は同梱していたが、紙幅の制約や平面ゆえの分かりにくさがあった。動画であれば、初心者でもコツをつかみやすい」(藤島氏)

手先を動かすのに加え、論理的な思考が求められるので、脳を刺激する、いわゆる「脳トレーニング」の効果がありそうだと以前からいわれてきた。しかし、はっきりしたエビデンス(証拠)がなかった。40周年の記念プロモーションに先駆けて、メガハウスはこのエビデンスを求めた。公立諏訪東京理科大学の篠原研究室(篠原菊紀教授)に依頼して、ルービックキューブを解いている子供たちの脳活動を計測して、脳活動との関連を調べてもらった。小学校4~6年生の男女22人を対象に調べた実験の結果、「論理的思考力と関係が深いとされる前頭前野が活性化されることが分かった」(藤島氏)。

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「リベンジ組」の大人が参戦