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写真はイメージ =PIXTA

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『経営戦略全史』の考え方を個人のキャリアに応用すると?

2013年に出版した『経営戦略全史』はこれまで14刷、海外分も含めると約10万部に達しました。望外の喜びです。出版後、似たテーマでの執筆を考えていたときに浮かんだのは、企業ではなく、人生の戦略、Strategy of Life、というものでした。つまりは「キャリア戦略」です。

『経営戦略全史』での戦略コンセプトを、個人のキャリア形成に応用したらいったいどうなるでしょう?

過去100年の経営戦略論は大きく2派に分かれます。マイケル・ポーター率いるポジショニング派と、ジェイ・バーニー率いるケイパビリティ派です。

ポジショニング派:有望なターゲット市場(顧客や商品・価値)を定め、そこでの価値提供に必要な能力(ケイパビリティ)を培う
ケイパビリティ派:自分の強い能力(コア・ケイパビリティ)を定め、これで狙える市場を開発・開拓していく

ニワトリが先だというポジショニング派と、卵が先だというケイパビリティ派の論争に対し、両方の組み合わせでしょというコンビネーション派(ヘンリー・ミンツバーグ)もいます。これを「経営論マトリクス」と呼びましょう。

もう一つの戦略コンセプトは「バリュー・マトリクス」です。顧客(やステークホルダー)にどんな価値提供をするのか、という2×2のマトリクスです。

ここでもマイケル・ポーターは「トレード・オフ」、つまり二兎(にと)は追うな、ちゃんとひとつに集中して、他は捨てろと叫びます。確かに「戦略とは捨てることなり」というのは『孫子』の頃からの名言です。

でも、その不可能だった価値の両立をこそ、われわれはイノベーションと呼ぶのです。それをブルー・オーシャンと名付けたのがINSEAD教授のチャン・キムとレネ・モボルニュでした。

この2つの戦略コンセプトが、人生のキャリア戦略においても使えます。まず経営論マトリクスで見たとき、そもそも人はどっちのスタイルで生きていくのでしょう。ターゲット企業や事業領域・商品を絞っていくのがキャリア論としては主流でしょう。ポジショニング派です。

でもコア・ケイパビリティをもってさまざまな企業や職種を渡り歩く人もいます。語学(英語での異文化コミュニケーション力とか)や外資系秘書、プロ経営者(と呼ばれる人たち)もそうかもしれません。ケイパビリティ派です。

業種・顧客特化がイヤだった私はジェネラリストを目指した

先回述べたように私自身のキャリアは学歴・職歴で見れば単純です。

・19~22歳:大学で物理学専攻
・22~42歳:外資系コンサルティング2社で経営コンサルタント
・43~56歳(現在):社会人向け大学院で教授

でも、事後的(レトロ・パースペクティブ)にではありますが、そこには大きなキャリア戦略があったのです。

私が就職活動のとき、就職先に望んだのは「仕事の多様性」と「鍛えられること」でした。飽きっぽかったので、同じことの繰り返しには耐えられません。自己鍛錬力にそれほど自信がなかったので、鍛えてくれそうな顧客や上司が必要でした。それで選んだのがボストン コンサルティング グループ(BCG)でした。

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