検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

笑いに全力投球 史上最低のミュージカル(井上芳雄)

第80回

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

井上芳雄です。11月9日に東急シアターオーブでミュージカル『プロデューサーズ』が開幕します。僕にとっては今年初めての新作ミュージカル。この数カ月はコンサート形式や再演ものが多かったなか、久しぶりに1カ月以上稽古をして臨む大型の作品です。ブロードウェイで大ヒットしたミュージカルコメディの傑作を、笑いの文化が異なる日本のお客さまにどう楽しんでもらうか。全力で笑いに取り組む毎日です。

『プロデューサーズ』はブロードウェイミュージカルを題材にしたブロードウェイミュージカル。かつてヒット作を生んだプロデューサーで、今は落ちぶれて破産寸前のマックスが、気弱な会計士のレオと組んで一獲千金を狙う話です。舞台が成功するよりも失敗したほうが利益を生むことに気づいたマックスは、舞台をわざと失敗させて、資金をだましとる詐欺を思いつき、史上最低のミュージカルを作ってボロもうけしようと計画します。1968年の同名映画を基に、2001年にブロードウェイで舞台化されて、その年のトニー賞で史上最多の12部門で最優秀賞を受賞したコメディの傑作。05年には舞台を演出したスーザン・ストローマンが監督を務め、同じ主要キャストで映画化もされました。

今回は僕がマックス、吉沢亮君と大野拓朗君がWキャストでレオを演じます。演出は福田雄一さん。映画・ドラマ・舞台とマルチに活躍されているクリエイターで笑いの達人です。福田さんとは、17年からミュージカルコントの番組『グリーン&ブラックス』(WOWOW)を一緒にやらせていただいています。舞台はストレートプレイの『ナイスガイ in ニューヨーク』でご一緒しましたが、ミュージカルは初めて。いつかやりたいですねと言っていた念願がかないました。コメディにこだわってこられた福田さんが手がけられるのにぴったりの大作なので、僕も挑戦のしがいがあります。

まさにアメリカ人が大好きなタイプのコメディで、風刺が効いていて、パロディーも満載。いわゆるアメリカン・ジョークもたくさん出てきます。なにしろ設定からハチャメチャ。お金持ちのおばあさんを言いくるめて、関係を持ちながら資金を調達。ナチスに心酔している作家が書いた『ヒトラーの春』という脚本を、ゲイのカップルで最悪の演出家とその助手に手がけさせて、主演女優には美人だけど英語が話せない女優を起用。大コケ間違いなしのミュージカルを作ろうというのですから。日本人にはなじみが薄い笑いの要素も多いので、そこをどう表現するかが今回のチャレンジでもあります。

ブロードウェイで演出を務めたスーザン・ストローマンには、リモートでのミーティングの際に「日本でやるとき、文化の違いでギャグが分からないこともあると思うのですが、どうしたらいいですか」と聞いてみました。すると、「ニューヨーカーが大喜びするネタがたくさん詰まっているから、確かに反応が違うことはあるでしょうね。テンポやリズムを変える必要があるかもしれないわ。でも、とっぴな人物を演じるのではなく、あくまでもリアルな人物で、極端な人たちがたくさん出てくるというふうにやってほしいの」と有益なアドバイスをくださいました。

福田さんのやり方は、1幕のお芝居や動きを2日くらいで作って、3日目にはもう通しで稽古をします。2幕も同じで、とにかくばーっと全体を一度作ってみる。そのあと1週間から10日くらいかけて、役者がこうしたら面白いんじゃないかと思う演技をいろいろやって見せて、ネタがたまってきたら福田さんが整理して、本番の初日に向かうという流れです。今回は、ブロードウェイの舞台に忠実であることを大前提に、笑いの文化の違いを多少フォローしたり、表現を工夫したりというさじ加減を稽古で試行錯誤してきました。

僕もずっとミュージカルコメディーをやってきて、ブロードウェイで大笑いされている場面を、日本でそのままやっても、お客さまがポカンとなってしまうことが多々ありました。福田さんが前に言っていたのは、日本の笑いの文化はボケとツッコミだけど、米国の笑いは基本的にボケっぱなし。お客さまがよく笑うから、お客さまの笑いがツッコミとなって成立している。その違いなんだと。日本のように、ボケたら誰かがツッコんだ方が、ここは面白いところなんだ、とお客さまに分かりやすいのですけどね。だから今回、僕はずっとツッコミをやっているのですが、下ネタのジョークで笑えるか笑えないかぐらいのものは「今、言ったの下ネタなんだけどね」と一言足すようなことも稽古で試してみました。そこはまだ手探りしている段階です。

 僕が演じるマックスは落ちぶれたプロデューサーで、僕がこれまでやってきた役とはだいぶ感じが違います。ブロードウェイで演じていたネイサン・レインはちょっと太ったおじさんという感じでしたし。一方で、やり方こそとんでもないのですが、ショービジネスの世界がものすごく好きで、もう一花咲かせたいと願っている思いはよく分かります。俳優として周りのいろんなプロデューサーを見てきているので、違和感なく演じられます。

プロデューサーはやっぱりみんな個性が強いですから。生の舞台やカンパニーはトラブルがいつ起きても当然という状態です。誰かが病気したとか、役を降りるとか、ケンカしてるとか、ギャラを上げてほしいとか、お客さまが入らないとか、いろんな問題が常に起こっていて、それを顔色も変えずにさばいていく。多少なりとも二枚舌がないとやってられない。ウソは言わないけど、本当のことも言わないみたいな(笑)。マックスも極端ではあるけど、ショーを成立させるためならどんな手段もいとわないというところは、まさにプロデューサーのかがみです。

振り付けはブロードウェイの踊りそのまま。オリジナル振付のスーザン・ストローマンの個性が出ていて、どれもちょっとずつ難しくて素晴らしい。400本以上の動画をブロードウェイのスタッフが作ってくれて、日本の振付チームと協力して振りを教えてくれました。稽古には、米国のスタッフもリモートで参加しました。ブロードウェイは劇場の閉鎖がずっと続いていて(2021年5月まで閉鎖の予定)、みんな仕事がない状況だから、喜んでくれました。今、日本でショーができているのは信じられないし、本当にうれしいって。動画の撮影には、オリジナルキャストをはじめブロードウェイの舞台に出ていた人が集まってくれたそうです。ナチスの軍人に見立てた人形を使う振り付けがあるのですが、その人形も今はどこでも使ってないからと送ってくれて、本物を使わせてもらっています。そんなブロードウェイとのコラボレーションもありながらの日本版上演です。

歌は1968年のオリジナル映画を監督したメル・ブルックスが、ミュージカル化にあたって作詞・作曲をしています。ブロードウェイミュージカルらしい曲がたくさんあって、芝居から自然に歌にいけるように上手に作ってあります。オーケストラが入るとさらに気分が高揚します。オリジナルの映画もかなりぶっ飛んでいますが、コメディとして面白いし、ネタはきわどいけど、パロディーで笑い飛ばすことでナチスの批判にもなっている。それがミュージカルになることで、バカバカしさがパワーアップして、コメディとして素晴らしい作品になっています。

笑いは常に100%の力でリアクション

僕は『ミー・アンド・マイガール』『ウェディング・シンガー』といったミュージカルコメディーをやってきましたが、このジャンルには独特の感覚があって、特に真ん中の役をやるときの感じを思い出しています。主人公はほとんどの場面に出ていて、強烈なキャラクターなのですが、物語が進むにつれて、さらに変な人がどんどん出てきて、中盤くらいからはリアクション芝居というか、変な人をどんどんさばいていく。最終的には自分で物語を引き取るのですが、とにかくずっと舞台上で激しく動いている。アスリートのような感じです。笑いって理屈じゃないところがあるから、手加減するとばれるので、常に100%の力でリアクションするしかなくて、すごくエネルギーがいる。それを、できる限り力まずに、みんなのキャラクターを受け止める。その感覚が久しぶりによみがえってきました。歌が主体のミュージカルやドラマチックなお芝居とは全然違う感覚です。

笑いを生み出すのは、とにかく大変。稽古場は笑いにあふれていますが、やる方は懸命だし、滑るかもしれないから勇気もいる。でもみんな必死で、何かに取りつかれたように毎日違うネタをやっている人もいます。福田組が初めての若手俳優は、「もう倒れそうです」と言いながらも、頑張っている。そうやって新しいものを創ることって戦いだし、すごくエネルギーがいることだけど、だからこそいとおしいと思える毎日です。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第81回は2020年11月21日(土)の予定です。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_