凶暴なティラノサウルス類 生まれたては「チワワ」大

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/12/4
ナショナルジオグラフィック日本版

孵化したてのティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)の想像図。今回発見された胚の化石はティラノサウルス・レックスのものではなく、近縁の初期のティラノサウルス類と考えられているが、まだ特定はされていない(ILLUSTRATION BY JULIUS CSOTONYI)

ティラノサウルスの仲間は地上最大級の肉食恐竜として知られるが、赤ちゃんのころはチワワほどのサイズで、長い尻尾をもっていたらしい。英エディンバラ大学の古生物学者グレゴリー・ファンストン氏は、発掘された赤ちゃん化石をティラノサウルス類と特定、2020年10月中旬にオンラインで開催された古脊椎動物学会の年次総会で発表した。

化石のティラノサウルス類は、まだ胚の段階で、卵の殻に守られて発達の途中だったとみられる。足の爪と下あごに当たる二つの化石が、北米の別々の発掘現場で見つかった。どちらも7500万年前から7100万年前の時代、ちょうどティラノサウルス類が最上位捕食者として君臨しはじめたころの化石だ。

小さな足の爪は、カナダのアルバータ州、先住民が暮らす地域にあるホースシューキャニオン累層で2018年に見つかった。あごの化石も、先住民の土地である米モンタナ州のツーメディスン累層で1983年に見つかった。

これらの化石の重要性は、発掘してすぐに認識されたわけではなかった。大学院生だったファンストン氏は、足の爪の正体を突き止める研究を行っていたとき、指導教官のフィリップ・カリー氏から石に包まれた小さなあごを見せられた。あまりに細くて、石から取り出せないほどだった。「ティラノサウルス類のものだとはまったく思っていませんでした」とファンストン氏は話す。しかし、3次元(3D)スキャンと復元作業によってあごの全体像が明らかになると、その考えは変わった。

上段と中段の図は、既知のティラノサウルス類のあごの骨。その下の小さくて黒いシルエットが今回見つかった胚のあごの3D復元図。比べると、いかに小さいかがよくわかる。一番下は、比較用に別の画像を10倍に拡大したもの((C)GREGORY FUNSTON, 2020)

今回の研究に関わっていない米オクラホマ州立大学の古生物学者エバン・ジョンソン=ランサム氏は、これらの骨は他の恐竜たちと「診断・識別可能」と述べる。特にあごの骨は、既知のティラノサウルス類の骨とよく似ている。

「ティラノサウルス類の赤ちゃんについて、理解を深めるチャンスだと思いました。完全に謎に包まれていましたから」とファンストン氏は話す。これまでに見つかっているティラノサウルスの化石は、ほとんどがおとなか若い恐竜のものだ。赤ちゃんは推測によって復元されていたが、実際にどんな姿をしていたかは誰も知らなかった。今回、足とあごの化石が特定されたことによって、実際の化石と照合して判断できるようになる。

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