経済理論をビジネスに活用 広がるメカニズムデザイン

経済学の活用を促す「オークション・ラボ」(10月29日、都内)
経済学の活用を促す「オークション・ラボ」(10月29日、都内)

経済学者が理論を応用して新しい制度を設計し、ビジネスの世界などで活用する「メカニズムデザイン(制度設計)」が日本でも広がり始めています。

三省堂書店有楽町店(東京都千代田区)は9~10月、経済学をテーマとするブックフェアを開催しました。その中の10冊を対象に、マジョリティー・ジャッジメント(MJ)と呼ばれる方法を使って読者の人気投票を実施しました。投票対象の本ごとに読者に6段階の評価をしてもらい、評価を集計して順位を決める方式です。この方式では、似通った対象が票を食い合う「票の割れ」を防ぎ、人気に応じた順位がつく可能性が高いとされています。同時に、1人1票の多数決での人気投票も実施しました。

仕掛け人はメカニズムデザインの専門家である慶応義塾大学の坂井豊貴教授です。結果をみると上位1、2位は両方式とも同じでしたが、3位はMJと多数決で結果が分かれました。「MJで3位の本は広い層から高い評価を受けたので、様々な売り場や棚に置くとよい。一方、多数決で3位の本は特定の層から支持されているので、その層に絞り込んでアピールすればよい」と分析します。

坂井氏は、今年のノーベル経済学賞の授賞対象となったオークション理論の応用にも積極的です。今夏には、ブロックチェーン技術をエンタメに応用しているGaudiy(東京・渋谷)と共同で、新たなオークション方式を開発しました。同社はデジタルゲームのカード販売を新方式で実施したほか、他の事業でも活用する計画を示しています。

不動産オークションを手掛けるデューデリ&ディール(東京・千代田)とも協力しています。同社の今井誠取締役は「事前に収集した買い手のデータを分析し、オークション方式のほうが売り手にとってよいのかなど、経済理論を応用すると様々なポイントが明確になる」と言います。年間の契約件数は60~70件と1年前に比べて2倍近くに増えました。

オークション理論の応用は世界各地で進んでいます。政府による周波数免許の売却、IT(情報技術)企業によるネットの広告枠の売却が代表例です。求める側と求められる側の最適な組み合わせを考える「マッチング理論」も、臓器移植、研修医と病院の組み合わせ、学校の選択といった幅広い分野で役立っています。

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