2020/11/20

アルマのデータから、研究チームは、ホスフィン分子がエネルギーを吸収すると出るかすかなシグナル(スペクトル線)を金星の大気中で発見した。金星や地球などの岩石惑星では、生命がいなければホスフィン分子は存在しないと考えられている。もし本当に大量のホスフィンが金星に存在するのであれば、生物学的に生成されたものであると考えない限り、その存在を説明するのは難しいと研究チームは主張する。

一方で、これに懐疑的な科学者もいる。論文の発表当時、アルマ観測所の科学者ジョン・カーペンター氏は、研究チームによるデータの分析方法に疑問を呈し、偽のシグナルを認識した可能性があるという。加えて、天文学者は通常、分子の存在を確認するにあたり、複数のシグナルを確認するのに対して、この研究チームはそれができていなかった。

ほかの望遠鏡の観測データを精査

論文の発表後、最初の研究チームに属していたグリーブス氏とソウサ・シルバ氏を含むまた別のチームが、ハワイにある米航空宇宙局(NASA)赤外線望遠鏡施設の過去の観測データで、金星のホスフィンについて調べた。

2015年のその観測データからは、ホスフィン由来の強いシグナルは見つからなかった。フランス、パリ天文台のテレーザ・アンクレナズ氏率いるこのグループは、同時に金星の大気中に存在できるホスフィンのレベルの上限も示し、元の研究で検出された量の4分の1であると結論づけている。

また、金星にホスフィンが存在するとしても、それは金星の雲よりも高い場所でなければならないことが示唆された。だとすれば、ホスフィンガスはすぐに分解されてしまうため、ホスフィンが存在する可能性は低いとアンクレナズ氏らは考えている。

ホスフィンの専門家で両方の研究グループに属するソウサ・シルバ氏は、ホスフィンが存在していても、赤外線観測で検出されない可能性をいくつか挙げている。たとえば、ホスフィンの量は時間の経過とともに変化するのかもしれない。あるいは2015年の観測データは、金星の大気中を元の研究ほど深く探査していなかったのかもしれない。

「アンクレナズ氏の研究は信頼しています。つまりホスフィンは、そこにはなかったのです」とソウサ・シルバ氏は言う。「問題は、『そこ』とはどこなのかということです。高度はどの程度でしょう。この結果は果たして、わたしたちは十分な深さまで調べていて、そこにはホスフィンが元々なかったということを意味しているのでしょうか。それとも、調べる深さが足りなかったのでしょうか」

同じデータを再検証

アンクレナズ氏らがほかの望遠鏡のデータを精査したのに対し、別の2チームは、ホスフィンが検出されたオリジナルデータを再検証した。そしてそのどちらも、ホスフィンの確かな痕跡を見つけられなかった。

1つ目のグループは、ジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)のデータとアルマ望遠鏡の両方のデータを検証したが、ホスフィンの証拠は見つからなかった。JCMTでは同じ周波数にシグナルを検出したものの、これは金星の大気中にある二酸化硫黄ガスだと考えられるという。

「二酸化硫黄が金星にあることはよく知られており、まったく意外ではありません」と、NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者、コナー・ニクソン氏は言う。

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