洗顔・除毛・メーク メンズコスメ、在宅勤務でヒット
2019年春からメンズコスメ専用コーナーを本格的に拡大しているロフトは20年秋、全国129店舗およびネットストアで「ロフト コスメフェスティバル for MEN 2020AW」を開催した。メンズコスメは毎年売り上げを伸ばしており、今回は34ブランド、最多となる約150種をラインアップした。
メンズコスメ市場が拡大する中で新型コロナウイルス感染症が流行したが、業界にとっては追い風に。マスクによる乾燥などの肌荒れやオンライン会議で画面に映った自分の顔色が悪いことに気付いたり、鏡を見る時間が増えたことで眉毛を整えたくなったりと、在宅時間の増加に伴ってセルフケアにかける時間が増えたのだ。
「もともと潜在的に男性需要はあったが、コロナ禍でお手入れの時間が増え、メーカーやアイテム数が増えていることも追い風となった」と、ロフト商品部 営業企画部 広報・渉外部部長の池田晶子氏。購買層は学生から40代のビジネスパーソンまで幅広く、緊急事態宣言明けの5月下旬に実店舗の営業を再開したとき、ドラッグストアでも百貨店でも買えないメンズケアグッズが売れたという。
この勢いをけん引しているのが、13年にスタートした男性用コスメの先駆け的存在「BULK HOMME(バルクオム)」だ。もともとSNSで広がり、20年4月にテレビCMを展開して一気に認知が広がった。「おこもり需要として今までの飲み代を自己投資に回す人が増え、これまでメンズコスメを使っていない人にも広がった」というのは、バルクオム(東京・港)コミュニケーション・デザイン部の鎌田悠右氏。
看板商品は、テレビCMでもおなじみの柔らかい生せっけんをネットで泡立てて使う洗顔料だ。「従来の男性用洗顔料はすっきりさせるものが主流だったので、保湿感を残し、肌に必要なものを残す生せっけんは注目された」(鎌田氏)。男性がネットで泡立てて使うのはかなり面倒な気もするが、最初は面倒だと思っても、使っているうちにそれが「楽しい」に変わってくるという。
今回のフェアは、新規ブランドや先行発売商品も多数。個性的な商品がそろう。
2年前に誕生したHMENZ(エイチメンズ)の注目アイテムは男性用リムーバークリーム(税込み2981円)、いわゆる除毛剤だ。口コミで広がり続け、今ではネット通販で1日1000本を売り上げるヒット商品となった。「数年前から海外では男性用リムーバーが売れており、海外の流行はいずれ日本にも来ると商品開発に取り組んだ。スポーツをしている人のほか、韓国系アイドルの影響もあって市場が広がっている」と同ブランドをサポートするナチュラルフローサイエンス(東京・港)CEOの福本剛広氏はいう。
緊急事態宣言下における「除毛剤」の検索件数は通常時の180%とさらに注目度が高まった。男性の濃いムダ毛でも塗って5~10分で除毛可能で、刺激も少ないという。アロエなどの植物成分を配合しており、使用後もしっとりと潤うことも特徴だ。購入履歴を見ると、女性も少なくないというのもうなずける。
今まで男女問わずコスメ商品を企画し、満を持して20年4月に自身のブランド「THE FUTURE」を立ち上げたSTORiiY(東京・渋谷)の渡辺真大氏は、「男性の三大悩みは、抜け毛、口臭、体臭。コスメだけではなく、トータルケアができるようにと、立ち上げ時の商品ラインアップにマウススプレーを投入した」とコスメ以外の可能性も視野に入れる。発売当初からロフトのリコメンド商品に選ばれたことで順調に売り上げを伸ばし、10月にはマスク用除菌・消臭アロマスプレーをロフトで先行発売した。
英国発のメンズメークアップブランド「WAR PAINT.(ウォーペイント)」も日本初上陸。日本のメンズコスメ市場ではスキンケア商品が多いが、こちらはメーキャップ商品に特化。現在、世界79カ国で販売しており、BBクリーム、コンシーラー、仕上げのフェイスパウダーと、顔色補正の商品に注力している。つけ心地はスーッとなじむ軽さで、メーク初挑戦の男性でも全く違和感がない。赤みのある肌にも自然になじむのでメークをしている感じが出ず、男女問わず使える。
「最近はマスクの着用で鼻の周りが乾燥したり赤くなったりするが、そんなときにBBクリームで抑えることもできる。今メークをしている20代はもちろんのこと、美容男子と呼ばれる30~40代にスキンケアの延長で使ってほしい」と日本総代理店となっているプリアップ(横浜市)の工藤巴氏はいう。コロナ禍で女性化粧品市場は縮小傾向にある一方、男性向けは勢いを増しているようだ。
(ライター 吉田理栄子)
[日経クロストレンド 2020年10月26日の記事を再構成]
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