Men's Fashion

スーツはサステナブルな服 ワクワクする相棒だ

SUITS OF THE YEAR

スーツ・オブ・ザ・イヤー2020受賞者インタビュー(2)岩元美智彦さん

2020.11.7

「スーツ・オブ・ザ・イヤー2020」は今年も独自の挑戦を続け、際立つ存在感を示した5人を表彰した。新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、多くの既成概念がリセットされるなか、新たな日常の基盤となる価値観を提示し、人々を勇気づけ、常に未来に目を向ける受賞者の方々のインタビューを連載する。一人ひとりの個性と響き合う、メッセージが込められたスーツにも注目していただきたい。




ビジネス部門

岩元美智彦さん

日本環境設計会長

グレーのスーツ 「デロリアン」の挑戦に重ねる

岩元美智彦さんは普段、ネイビーの無地のスーツを着ることが多い。だが授賞式に臨むにあたっては「スーツでも『挑戦』が大事だと考えて」まったく別の色柄を選んだ。グレーのストライプだ。このグレーにはもう一つ、別の意味がある。「愛車『デロリアン』の車体のカラーに合わせたんですよ」と、にやり。

デロリアンとは1980年代の米映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するタイムマシンのこと。スーパーカーのような未来的なデザイン、そして燃料はゴミだ。本格的なリサイクル時代の到来を予言するマシンだった。

2015年、グレーのデロリアンが、東京・お台場を疾駆した。燃料は全国から集めた古着をリサイクルしてつくったバイオ燃料。日本環境設計のリサイクル技術の力を世界にアピールするためのイベントだった。映画の中で「未来」に到達した時刻だった16時29分に走り出すと、大勢の観衆から歓声が上がり、海外でも広く報じられた。ようやく、時代が映画に追い付いた。

「ベンチャーの技術って、日本ではほんまかいなと思われがち。海外では全然違ってて、すごい、とちゃんと評価してくれる」

「リサイクル機運を高めるカギはワクワク、ドキドキ、楽しさにある」。岩元さんは、そう断言する。映画から飛び出したデロリアンを目の前で走らせることで、自ら「ワクワク、ドキドキ」の効用を実証してみせた。

日本環境設計は、あらゆる古着を回収して一部を再生繊維に変え、新しい服を生み出すという循環型のプロジェクトを確立し、国内外から注目を集めるベンチャーだ。

繊維商社に勤めていた岩元さんは、当時難しいとされていた衣料品リサイクルを実現する夢を長年抱いてきた。たまたま交流会で出会った15歳年下の大学院生で現社長の高尾正樹さんと意気投合し、2007年に二人三脚で創業した。ただ「ゴミを循環させる時代がくる、と話しても、最初はだれも聞いてくれませんでしたね」。