ならば自分たちでやるしかないと、技術を磨き、自社工場を稼働。古着回収から再生繊維を使った製品開発まで一貫して手掛ける体制を整えた。リサイクルをわかりやすく「見える化」するイベントを次々と仕掛け、消費者を巻き込んでいった。

投資家へのプレゼン、「信頼感」のスーツで

時間はかかったものの、消費者の環境意識の高まり、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の広がりなどが追い風となり、徐々に賛同する企業が増えた。現在は150社を超えるアパレル、流通企業などと、再生繊維を使った商品などで連携する。古着回収拠点は国内2800カ所となり、年600トンを回収。資本金は創業時の120万円から42億円まで増えた。

2020年は海外に打って出る年。「技術、消費者、メーカー、金融。オセロでいう、四隅をおさえました」

2020年は海外へ打って出る。中古衣料が世界中にあふれ、年9000万トン以上の衣類が廃棄されている。欧州では衣類の焼却やゴミの輸出規制が待ったなしの状況だ。「今後、自国のゴミを自国でリサイクルして資源化、商品化するという流れになっていくのは確実です」

このほど世界最大の仏プラントメーカー、アクサンスとの提携を発表。すると関連技術を擁する世界中の企業から提携のオファーが舞い込んできた。英国最大のグリーンファイナンス機構からの認証を獲得し、資金調達の道筋もついた。「技術、消費者、メーカー、金融。オセロでいう、四隅をおさえました」

こうして数々の壁を乗り越えてきた時に、いつも「相棒」であったのがスーツだった。

ベンチャー経営者が投資家にプレゼンテーションする「ピッチ」イベントでは、常にスーツで挑んできた。同じピッチに登壇する経営者らは、Tシャツにジーンズといったカジュアルな服装が大半だ。「だからこそ僕はスーツ。スーツのいいところは、信頼を得られること。そして、自分の思いをストレートに表現できること」。大きな大会で近年立て続けに大賞を受賞しているのも、スーツのおかげだという。

「北九州のうちの工場はプラント設計から設置まで自前。日本の高度成長期を支えた70代の職人たちが働いてくれたからなんです」

すぐに消費される衣料品とは異なり、「体形にあうスーツは長く付き合える。スーツもある意味、サステナブルな服ですよね」。今回着用するスーツを決めるとき、採寸にはじまり、生地やボタンを選ぶ過程にワクワクした。「自分に似合うスーツを選んでいくのは、恋人を探すかのようにドキドキしました」

国連は30年までに17項目のSDGsを達成するとしており、次の10年間は国も企業もサステナビリティーを真剣に考える大事な10年となる。来年開催予定の東京2020オリンピック・パラリンピックでは同社の技術を用いたリサイクル素材のメダルが贈呈され、選手が着用するユニホームにも同社のリサイクル繊維が使用される予定だ。「まさに世界展開できるスタートラインに立ったところ」。スーツを相棒に次の挑戦を描く。

(Men's Fashion編集長 松本和佳)

<< スーツもデータも一人ひとりを輝かせる 宮田裕章さん
スーツ、肩の力抜いて楽んで 鈴木保奈美さん >>


SUITS OF THE YEAR 2020

新型コロナウイルスの影響で、2020年は初のフルCGで作成した会場でのバーチャル授賞式。
時代の節目に挑み、大切なメッセージを放つ5人を表彰した。

>> 詳細はこちら

SUITS OF THE YEAR 2021
Watch Special 2021
SPIRE
SUITS OF THE YEAR 2021
Watch Special 2021
Instagram