肥満でも痩せても寝たきりの危険 フレイル防ぐ境界は

日経Gooday

フレイル対策は、介護予防の観点から大きく注目されています(C)Jovan Mandic-123RF
フレイル対策は、介護予防の観点から大きく注目されています(C)Jovan Mandic-123RF
日経Gooday(グッデイ)

要介護に直結しやすい「フレイル(心身の虚弱状態)」のリスクは、肥満度を示すBMIが低い人でも高い人でも上昇することが、約7200人の日本人高齢者を対象とした研究で明らかになりました。

日本人の高齢者のフレイルと肥満度の関係は不明だった

近年、フレイル(Frailty)という言葉を耳にする機会が増えてきました。フレイルは、「加齢に伴う様々な機能変化や予備能力の低下によって、健康障害に対する脆弱性が増加した状態」のことで、具体的には、体重減少、筋力の低下、疲労感、歩行速度の低下、活動量の低下、認知機能の低下、気分の落ち込み、社会的孤立などによって、転倒やうつ、認知症などのリスクが高まった状態を示します。

フレイルの有病率は、年齢とともに上昇します。高齢者のフレイルは、死亡や障害(要介護状態)のリスクの上昇に関係するため、フレイルを予防するための公衆衛生プログラムが必要だと考えられています。

英国で行われた研究では、BMIが低い人とBMIが高い人の両方にフレイルが多いことが示されていました。しかし、英国人と日本人では、BMIの平均値や分布が異なるため、そうした結果を日本人に直接当てはめるわけにはいきません。そこで、国立健康・栄養研究所などの研究者たちは、京都で行われている前向きコホート研究「亀岡スタディ」に参加している65歳以上の高齢者を対象に、BMIとフレイルの有病率の関係を調べることにしました。

BMI=体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕

低体重:18.5未満
普通体重:18.5以上25未満
肥満:25以上35未満
高度肥満:35以上

※上記は日本肥満学会の基準(詳しい肥満度分類はこちら→ https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html)。WHO(世界保健機関)は25以上を過体重、30以上を肥満と定義している。

亀岡スタディの参加者1万8231人のうち、今回の分析に必要な情報が全てそろっていたのは7191人でした。平均年齢は73.4歳で、女性が52.7%、BMIの平均は22.7でした。BMIは、男性、高血圧、心疾患、糖尿病、脂質異常症の患者、年齢が若い人、非喫煙者などで高い傾向が見られました。これらの人たちを、BMIに基づき以下の6群に層別化しました:18.5未満(562人)、18.5~19.9(787人)、20.0~22.4(2195人)、22.5~24.9(2218人)、25.0~27.4(1006人)、27.5以上(423人)。

今回対象とした高齢者には、BMIが30以上の人がほとんどいなかったことから、27.5以上は一群として分析しました。

フレイルの評価には、Friedらの評価基準(FPモデル、[注1])と厚生労働省の基本チェックリスト(KCL、[注2])の2つの指標を用いました。

[注1]Friedらのモデル:(1)体重減少(2)主観的疲労感(3)日常生活活動量の減少(4)身体能力(歩行速度)の減弱(5)筋力(握力)の低下――の5項目のうち、3項目以上該当した場合をフレイルと定義。

[注2]厚生労働省の基本チェックリスト:25項目からなる。今回は7項目以上該当すればフレイルとした。「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」(https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1c_0001.pdf)p 5表1参照。

BMIが低い群と高い群の両方でフレイルの有病率が高い

各群におけるフレイルの有病率を、BMI 22.5~24.9群を参照として比較したところ、BMIが低い群(18.5未満/18.5~19.9)と高い群(27.5以上)において、フレイルの有病率が高いことが明らかになりました(表1)。

表1 BMIとフレイルの有病率の関係

(J Clin Med. 2020 May; 9(5): 1367.)

 横軸をBMI、縦軸をフレイルのオッズ比として両者の関係を表したところ、FPを用いて評価した場合とKCLを用いて評価した場合のいずれも、描かれた曲線はU字型になりました。これらの曲線に基づいて推定すると、フレイルの有病率が最も低かったBMIは、評価にFPを用いた場合が24.7~25.7、KCLを用いた場合は21.4~22.8でした。

今回得られた結果は、BMIが低い人、高い人の両方において、フレイルのリスクを評価し、予防のための対策を講じる必要があることを示唆しました。

論文は、2020年5月6日付の「Journal of Clinical Medicine」電子版に掲載されています[注3]

[注3]Watanabe D, et al. J Clin Med. 2020 May; 9(5): 1367.

[日経Gooday2020年9月25日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
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