BiSHアイナ・ジ・エンド 今こそ余裕ある空気感が必要

日経エンタテインメント!

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新型コロナウイルスが音楽活動に多大な影響を及ぼすなか、アーティストたちは自問自答しながら、新しい挑戦に取り組んでいる。6人組ガールズユニットBiSHのアイナ・ジ・エンドもその1人だ。配信だからこその演出や無観客ライブゆえの試みについて語ってくれた。

12月27日生まれ。BiSHの結成メンバーの1人で、持ち前のハスキーボイスが特徴。ほぼ全曲の振り付けを担当。今年2月期のドラマ『死にたい夜にかぎって』のエンディングテーマの同名曲は、歌唱だけでなく作詞作曲まで手掛けた初の書き下ろし曲となった(写真:中川容邦)

「こんなにもライブができなかったのは初めてなんです……」と寂しそうに語ったアイナ・ジ・エンド。BiSHは7月22日にニューアルバム『LETTERS』を発売。当初はシングルのリリースを予定していたが、この現状を見据えて新たに曲を制作、全7曲を収録する。初回生産限定盤の特典は、封入するレターセットで手紙を送ってきた応募者に直筆の手紙を返すというもの。少しでもファンとの交流を図れるような取り組みを積極的に行っている。

8月1日には所属事務所・WACKのユニット8組が出演した無観客配信ライブ「WACK FUCKiN'SORRY PARTY」を開催。今後は、配信だからこその演出や無観客ゆえの試みを、アイナは思いついているようだ。

「正直、無観客でのライブは、清掃員(BiSHファンの総称)の方の反応がないので、終演後に虚無感に襲われたりします。ただ安易に人を入れたライブを行い、もし会場に来た方が感染して最悪の結果を引き起こしてしまったら……とも考えてしまうし、非常に悩ましいですね。

配信ライブの経験を通して気がついたのは、自分がいかにカメラを意識していなかったかということ。客席に向けていた意識が減ったぶん、最近はカメラ目線にも徐々に慣れてきました。なので今後もしかなうなら、ダンスはキレッキレなのに、ずっとカメラ目線のままみたいな配信ライブをやってみたいですね(笑)。

それから、お客さんのいない環境を生かすなら、あえて客席に降りるのもやってみたい。ナンバーガールさんの無観客配信ライブを見ていたら、俳優の森山未來さんが乱入して客席で踊り狂っていたのが面白くて。メンバーの誰かがパフォーマンス中にいきなり客席に降りて、一人荒ぶるのも楽しそうだなと思います」

言葉の選び方にも変化が

BiSHの楽曲の振り付け担当でもある彼女。これまでは、「狭い空間でもお客さんが踊れるよう、手を肩から上に上げる振りを重視していた」と話す。しかし、このような状況となった今、振り付けを再考し、変化させようとしているそうだ。それは作詞やSNSで使う言葉も同様だという。

「言葉の選び方は変わってきた気がします。以前、作詞をする時は、絵が浮かぶような歌詞を意識していました。例えば、過去に出したソロ曲『きえないで』では歌い出しで『星のないプラネタリウム』と書いたんですが、ひょっとしたらその一文で悪い記憶がフラッシュバックする人がいるかもしれない。なので、何かを限定してしまうような表現ではなく、曖昧でありながらも新しい言葉をセレクトするようにしています。

ツイッターなどでも、重苦しい空気が流れている今は、『疲れた』とか、読んでくれた人が元気を失くしてしまうようなつぶやきは、しないよう心掛けていますね。

振り付けでは、アルバムのリード曲『LETTERS』から、今の状況を踏まえたものを意識するようになりました。ライブの定番曲『プロミスザスター』(2017年)なども改めて見直していて。PCやスマホでライブを見て下さっている方が、その場で手を下げたままでもマネできるような振り付けを考えています。

あと結成から6年目となり自分たちも大人になってきたので、パフォーマンス面でも余裕を見せられればなと。これまでは、とにかく必死に踊り続けるのがカッコいいと思っていたんです。そんななか、自粛期間中にスカパラさんに参加してもらったファンクナンバー『ロケンロー』の振り付けを考えていたとき、偶然ジェームス・ブラウンさんの動画を見て、彼の表現力に引き込まれちゃって。

あの時代のダンサーさんって指先を一瞬クイッとさせるだけでもフロアを沸かせるような魅力があるじゃないですか。私は勝手に“ニヤつきのバイブス”と呼んでいるんですけど(笑)。社会がどこかギスギスしている今こそあの余裕ある空気感が必要なはずだし、大人の女性として色気を出しつつ、BiSHとしてもさらに進化していきたいですね」

(ライター カネコシュウヘイ)

[日経エンタテインメント! 2020年10月号の記事を再構成]

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