コートだけで80着以上を持つ、大のファッション好き。あらゆるスタイルに挑戦してきたが、中でもスーツは大事にしているドレスコードだ。「伝統に対する敬意もあり、組織や様式美をリスペクトしながら、自分自身の個性を響かせることができるスタイル」だから。適度に体形を鍛えて、ベストな状態で着るという意味でも、スーツは身が引き締まるという。

スーツの「枠」のなかで個性を表現

ディオール、サンローラン、セリーヌとクリエーティブ・ディレクターを歴任してきたデザイナー、エディ・スリマンを好み、ちょっと裾が広がったフレアのスラックスのスリーピースにブーツを合わせ、教壇に立つ。

スーツでもっともこだわるのがシルエット。着やすさなんか求めない。「シルエットを含めて、自分の気持ちがアガるものかどうかを意識します」。夏場でもスリーピースのジャケットを脱いで、ベストとスラックスで通す。ただし「スタイルで『かぶく』のはいいのですが、品を失うとハレーションを起こします」。場のバランスを見て、エレガンスは保つようにしている。

今回着用したポール・スミスのスーツは生地選びのときから「気持ちがアガりました」。スキャバルの特別な生地はリオデジャネイロのニテロイ現代美術館の建物やエントランスまでのジグザグな傾斜を模したもの。裏地には仏リゾート地、ドーヴィルの植物が描かれている。「ポール・スミスも旅が好きなデザイナー。海外に出向けない今こそ、旅を共通テーマに生地を選びました」

「このヘアスタイルには世代を超えるという意味も持たせているのです」。最近、髪は真っ白から少しブルーがかったものが気に入っている

スーツは個性を殺すものではない。「決められた枠の中でその人らしさを表現できれば、スーツはもっと楽しくなる」。個性を解放するスーツスタイルを、遊び心が感じられるポール・スミスのスーツと重ね合わせる。

自分自身のファッションについて、いつもキーワードを考えているという。そのキーワードが最近、「クリエーティブ」から「イノベーティブ」へと変わった。「ひと目で分かるイノベーションとして、ヘアスタイルもホワイトに変えました」。美しく脱色したホワイトヘアは美容師の技術と自身の根性で研究を重ねて到達した色味。「慶応大学病院のドレスコードでも押し通せる」と笑う。

コロナを機に医療分野ではビッグデータの活用が加速。今後は様々な産業と連携したり、街づくりに生かしたりと、データを駆使して人々の暮らしを幸せにする挑戦を続ける。

(Men's Fashion編集長 松本和佳)

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