アルバム『strobo』には、ロック、ヒップホップ、ダンス、J-POPなど、多様な楽曲を収録する。何かしらのジャンルが突出するのではなく、並列に聴こえる上、どの曲もとてもクオリティーが高い。収録曲の『灯火』は、アコースティックギターとドラムのみで、サビに向けて見事なグルーブを生んでいる1曲で、『東京ラブストーリー』(FOD)の主題歌にも選ばれている。

海外も視野に入れた活動をしており、世界的アーティスト・LAUVサイドからのオファーを受け、グローバルリミックスアルバムに参加。また、Vaundy自身と楽曲『不可幸力』をフィーチャーした、SpotifyのTVCMがスタートしている

「『東京ラブストーリー』のプロデューサーから、『灯火』をドラマで使いたいと言われたんです。この曲はラブソングではなく、むしろ同世代に向けて歌った曲なんですが、ドラマを見たらすごくハマっていて。主要キャラクター4人それぞれの歌に聴こえるようになっていました。多くの人に聴いてもらうため、曲も多様な捉え方ができることを意識しているのが良かったのかもしれません。

音楽性が幅広いとよく言っていただくんですが、いろんな音楽を聴いて吸収してきたのが大きいのかなと。『影響を受けた人は?』と聞かれても特に思い浮かばないんですよね。振り返ると小学生の頃に小田和正さんを聴いていた記憶があるし、アニソンが好きだったのでAimerさんなどもよく聴いていた。サカナクションさんも好きだし……。その幅広さが曲にも反映されているのかもしれないですね。

僕を含め、今の若者の音楽の聴き方は、アルバムを1枚通して聴くという時代じゃない。だからいろんなところから“良いもの”を自分で集めてきて、もっと良いものを生み出せるようになってきてるんだと思います。なので、常に1曲1曲がシングルみたいな気持ちで作ってますね。アルバムも、ベストアルバムやプレイリストみたいな感覚に近いかもしれません」

楽曲をデザインする

大学でデザインを学んでいる経験が音楽活動にも強い影響を与えているという。また、それが海外への扉を開くことにもなると考えているそうだ。

「デザインの場合、何か問題があると、それをどういう技術やマテリアルを使って解決するかを考えます。僕にとって、それを音楽に取り入れるのは必然でした。曲を作る時も理由を考えるんです。『なんでこの場所にこういう音や歌詞が入っているのか』とか、『なんでここが跳ね上がると気持ち良いのか』とかって。そういう風に常に疑いの目を向けるようになりましたね。

またデザインを学ぶことは、アートワークやミュージックビデオなどにもつながっていく。世界中の人に僕の曲を聴いてもらいたいという野望があるんですが、正直、音楽だけで世界に打って出るのはなかなか難しい……。言語の壁がない視覚的な要素は、すごく重要になってくると思います。

きっと音楽のプラットフォームも技術の進歩と共にどんどん変わっていくでしょうしね。音って空気の振動なので、もしかしたら“触れる音楽”みたいなものも将来的には出てくるかもしれない。そういったものを、どう自分の音楽に取り込んでいけるかも楽しみです」

『東京フラッシュ』
 2019年9月にYouTubeで公開した『東京フラッシュ』のミュージックビデオは、新宿、上野、渋谷、浅草など、東京を感じさせるところで深夜に撮影を行ったという。監督はVaundyと旧知の仲で、VFXアーティストとしても活躍するMIZUNO CABBAGE。

(ライター 小松香里)

[日経エンタテインメント! 2020年10月号の記事を再構成]

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