リモートワークによって多くのメンタル不調が薄れたという情報もありますが、新しく、リモートワークによるメンタル不調が生じ始めているという声を聞くようになりました。不調者の総数が減っているから問題ない、ということにはなりません。

環境が変わることで新しい不調が生まれたとするのなら、それに対する対応が必要となります。ただ、まだ多くの会社の人事部がその対策を模索しているところであり、一朝一夕にどうすればよいかという方向性は見えてくることがなさそうです。

あたりまえになりつつあるリモートワークが、一部で新しい問題を引き起こすことになる。そんな状況の中で私たち自身はどのように対策を講じればよいでしょう。

リモートワークが広がった背景には、伝染性疾患による強制的な環境変化を背景に、リモートワークのメリットを享受しながらデメリットを排除しようとする動きがありました。環境変化が起きる前には、デメリットがあるからリモートワークは無理だ、となっていましたが、そうも言っていられなくなったからです。

そうして広がったリモートワークは、働き方に対して2つの軸が必要であることを示すようになっています。

それが「成熟度」と「裁量度」です。

成熟度とは、言い換えるなら1人でいても仕事がしっかりできるようになっているかどうかです。知識やスキルだけでなく、自分自身をプロフェッショナルとして律する意思の強さなどを総合して、成熟度として定義することができます。

裁量度とは、会社から与えられている意思決定の範囲です。顧客とのやりとりにおいて与えられた意思決定の権限、たとえば値引き交渉にどこまで対応できるか、といったことも含まれます。また必要に応じて働く時間を変えるとか、急な用事に対応する権利なども含めることができます。

一般的に成熟度と裁量度は、同時に高めていくことで、健全な行動を促進することができます。従業員が未熟なうちには上司の指示に従い、やがて成熟した段階で裁量権を高めていくような育て方が望ましいのです。

しかし突然のリモートワークの進展は、まず裁量度を一気に高めることになりました。その結果、成熟度にかかわらず労働時間に裁量が増え、個々の仕事においても自ら決めるべきことが増えました。

それらは成熟している人たちにとっては望ましい働き方であり、生産性も創造性も高まりました。リモートワークに対してプラスの発言をする多くの方々は、ある程度成熟している方々だといえます。

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成熟度の証明はプロセスと成果
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