マスクで荒れた肌… 「おうち美容」家電が好調
秋が深まり、そろそろ肌の乾燥が気になる季節。今年はスキンケアへの注目度が例年以上に高まっている。新型コロナウイルスの感染防止でマスクを常用し、荒れがちな肌をケアしようと考える人が増加。巣ごもり生活で「おうち美容」も広がったためだ。スキンケア用品や美容家電の売れ行きが伸びている。
「在宅勤務で運動不足なうえ、いつもマスクをしているせいで肌が荒れる。オンライン会議で自分の顔を見る機会も増えたので肌の状態が気になる」。東京都世田谷区在住の会社員、加藤千夏さん(28)は在宅勤務をきっかけに、スキンケアに強く関心を持ち始めた。
美容に詳しい同僚に相談したり、美容情報を発信するユーチューバーの動画を見たりして、手入れの方法やスキンケア用品の情報を入手。日本の有名ブランドや、海外の手ごろな価格のコスメなど様々な商品を試し、自分に合う方法や商品を探った。
これまでは洗顔後に化粧水や乳液をつける程度だったが、現在は毎晩スキンケアに30分ほど時間をかける。「出社が激減したので時間に余裕があり、念入りに手入れができる」。化粧水と乳液に加え、2種類の美容液を使い、パックも欠かさない。「毎日続けているので肌の調子がいい。通勤が増えても、今のケアを続けたい」という。
こうした需要を受け、スキンケア用品の販売は好調だ。マッシュビューティーラボ(東京・千代田)が運営するナチュラル・オーガニックコスメのセレクトショップ「コスメキッチン」では、1~9月の関連用品の売上高が前年同期比55%増えた。5月ごろから伸び始め、ネット通販がけん引した。
従来はスキンケアよりメーキャップ用品の売上高が大きかったが、逆転した。「在宅勤務やマスクの着用が増え、ファンデーションやリップは不必要と感じる人が増えた」とコスメキッチン事業部の松倉浩一副部長は話す。
特に売れ行きが好調だったのは韓国発のスキンケアブランド「FEMMUE(ファミュ)」。「花の香りがいい」などと好評で、寝る前につけるジェルや美容マスクなど、スキンケア用品の売れ筋上位の多くが同ブランドだそうだ。10月には顔だけでなく首まで覆える美容マスク「ドリームグロウマスク(BIO LIFTING)」(4枚入りで4620円)が発売され、今後も同ブランドの人気が続きそうという。
そごう・西武でも10月1~15日の通販サイトでのスキンケア用品の売れ行きが、前年同期比51%伸びた。コスメ情報を発信する同社の特設サイト「キレイデパート」でも、自宅でのスキンケアを特集している。
そごう横浜店(横浜市)のビューティーアドバイザー、石井麻衣さんはこれからの季節のスキンケアについて、「保湿重視のアイテムがお薦め」と話す。例えば、化粧水や乳液だけではなく、保湿クリームやオイル美容液を加えると効果的だという。
「マスクに保湿効果があると思う人が多いが、実は乾燥対策にはならない。マスク内は細菌が好む環境で、肌との摩擦も起きるので、例年以上に保湿して肌を保護することが大事」と指摘する。
美容家電も売れている。新型コロナ感染防止のため、エステに行かず、自宅でケアをする人が増えたためだ。東京都中央区の会社員、斎藤ひとみさん(35)は8万円の脱毛器を購入。「エステに関心があったが、今まで忙しくて行けなかった。在宅時間が増えたので、セルフメンテナンスをしようと思った」と話す。
ビックカメラでは5月以降、美容家電の売上高が前年を上回って推移している。「1人10万円の特別定額給付金の後押しもあり、特に6~8月が前年同期比1.5倍と好調だった」。売れ筋は脱毛器や美顔器など数万円する商品だという。
新型コロナの収束が見通せず、まだまだマスクが手放せない日々が続く。肌荒れの悩みも尽きなさそうだ。ただ、肌の状態がよければ、気分も上がる。今年の秋はじっくり自分の肌と向き合ってみてはどうだろう。
(杉垣裕子)
[2020年10月31日付 日本経済新聞夕刊]
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