ぴあが仕掛け、韓国ミュージカル 配信でファンを魅了

ミュージカル『モーツァルト!』は『僕こそ音楽』『星から降る金』などの代表的な名曲も見どころの1つ。日本版の歌詞と、韓国版の日本語訳ではニュアンスの違いも生まれ、演出の違いとともに視聴者の興味を引いた (C)EMK Musical Company

韓国ミュージカル『モーツァルト!』が、オンライン配信動画サービス「PIA LIVESTREAM」と「uP!!!」で日本語字幕付きの配信を行い、8月9~11日に6公演で1万人以上の視聴者を集めた。

『モーツァルト!』はウィーン発の演目。ミュージカル『エリザベート』を手掛けた黄金コンビ、ミヒャエル・クンツェとシルヴェスター・リーヴァイによる作品で、2010年に韓国で初演し、今回が5度目の再演。今年は10周年を迎えたスペシャル公演として、ヴォルフガング役には、パク・ウンテ、キム・ジュンス、パク・ガンヒョンといった、韓国スター俳優がトリプルキャストでそろい、開幕前から日本のファンの間でも話題になっていた。

今回の日本でのオンライン配信の主催は、ぴあ。同社では13年に『ウェルテルの恋』の日本公演を主催して以降、韓国ミュージカルの魅力を日本に広めるべく「韓流ぴあミュージカル」と銘打って、俳優によるコンサートや映画館、劇場での作品上映を続けてきた。韓国ミュージカルは高い歌唱力と演出のエンターテインメント性の高さで、日本でも年々ファンを拡大しつつある。同社のライブ・クリエイティブ事業局部長・浅野宗祐氏は、今回のオンライン配信実施の理由をこう語る。

「韓国版『モーツァルト!』は、日本のファンも多い演目ですが、今は公演のために渡韓するのが難しい状況。さらに10周年という特別な公演だったため、韓国の製作会社であるEMKミュージカルカンパニーとキャストの強い思いもあり、実現に至りました」

人気の演目であることと主演の一人であるキム・ジュンスのネームバリュー、日本語字幕付きという付加価値からある程度の視聴者数は見込んでいたというものの、初めての試みで数字は予測できなかったという。

チケットは1公演6000円、さらに3公演パッケージ9500円も用意(uP!!!のみauプレミアムパスプレミアム会員は各1000円引き)。トリプルキャストの見比べができる3公演パッケージも、好評を博した。パク・ウンテのヴォルフガングは美しく品格にあふれ、キム・ジュンスのそれは愛嬌たっぷりで純粋、パク・ガンヒョンが演じれば若々しく前向き……といった、三者三様の違いを楽しんだ視聴者も少なくないようだ。

収録は8月4、5日と、オンライン配信の数日前に行われたが、ここにも、ぴあが映画館で上映する「Kミュージカルシネマ」で5年にわたり培ってきたノウハウが発揮された。今回は、移動式クレーンカメラ3台と固定式カメラ6台の合計9台で撮影。その映像編集と字幕作業は公演翌日から急ピッチで行われた。ステージに近い距離感と的確なカメラワークで、劇場で見るのとはまた違う、配信ならではの臨場感が得られた。

これまでも複数の韓国のミュージカルカンパニーや俳優プロダクションとビジネスを展開してきた同社だが、今回の経験を武器に「今後もオンライン配信に限らず、リアルなミュージカル公演、コンサートも視野に入れながら継続的に進めていきたい」(浅野氏)と語る。

(日経エンタテインメント!10月号の記事を再構成 文/横田直子)

[日経MJ2020年10月30日付]

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧