松永 そうだった。この曲は完成するまでに何カ月もかかったし、Creepy Nuts史上1番苦労したぐらいじゃない? 周りのスタッフも、新しいものを作ろうとしてるから判断するのが難しかっただろうし。ただ、菅田さんが歌を入れてくれたときにやっと完成が見えた気がした。

R‐指定 菅田さんて、声に生々しさというか、脈打ってる感じがあるんですよね。だからそれが歌になると、一気に鮮やかさが増して血が通った感じになるんです。

あえて削ぎ落した歌詞

『日曜日よりの使者』は、もともと18年の『VIVA LA ROCK』(以下、ビバラ)に出演した際に、亀田誠治やピエール中野らと組んだユニットVIVA LA J‐ROCK ANTHEMSでカバーした1曲。曲中には、その時にフリースタイルで行った「本当の言葉はいつでも誰かを傷つける/だから俺はテキトーなウソでもついてその場を切り抜ける」といった約10小節のラップパートが2カ所入っている。

(写真:佐賀章広)

R‐指定 菅田さんと一緒にゴハンに行ったときにもう1曲ぐらいやりたいねって話になって。菅田さんが「ビバラ」の時の『日曜日よりの使者』の映像を見ててくれたみたいで、「あれどうですか?」と言ってくれたんです。

松永 あの曲は評判が良かったから、どこかで形にしたいと俺らも話していた。だから歌詞も当時とほとんど変えてないんだよね?

R‐指定 そうそう。たぶん曲用に考えて歌詞を書いたら、もっと詰め込んで、あんなシンプルな言葉の乗せ方にはなってない。ただあのときはライブで、しかもフリースタイルで披露したから、その場にいる人たちに一瞬で聴いて分かってほしくて。だから、すごく内容を削ぎ落とした。

松永 でもザ・ハイロウズさんの曲も、シンプルな歌詞を紡いだものが多いからそれが合ってたかもね。複雑に入り組むのは違う気がする。

R‐指定 あとレコーディングのときは、亀田さんとか「ビバラ」で演奏したときのメンバーが集結してくれて。2月のコロナ前の時期だったのによく全員そろったなという感じでしたね。

松永 彼らを迎えたり、菅田さんとコラボするなど、いろんな人の力を借りて作ったのは今回が初めてで。これまでは、俺たち2人がいかにヤバいかを分からせようという思いが強かったから、2人だけで成立するような曲作りをずっとしてたんです。でも今は、周りの人たちに受け入れられたという実感を持てたから、できたのもあるだろうね。

R‐指定 それは絶対にある。昔と違って人の手を借りても俺ら自身がブレることないしね。他人からの評価にも揺らぐことない自信を持てるようにもなってきたと思います。

『かつて天才だった俺たちへ』
 表題曲は、帝京平成大学のTVCMソング用に書き下ろし、1人1人が生まれたときから備え持つ才能や可能性について、エールを込めて歌う。一方、『ヘルレイザー』では、コロナ禍において思うように行うことができないライブを同名映画内に出てくる「禁断の箱」に例え、熱い思いをにじませている。(ソニー/ラジオ盤2200円)

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2020年10月号の記事を再構成]

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