STORY 東京海上日動火災保険 vol.29

オープンイノベーションで生み出す 変化を乗り切る未来の働き方

東京海上日動火災保険 東京自動車営業第4部
中島 真紀さん

新型コロナウイルスの流行に見舞われた2020年。東京海上日動火災保険の中島真紀さん(36)は営業最前線の部署で、2歳の長女の子育てに追われながら新たな施策に挑戦している。環境変化に負けない仕事ぶりを支えるのは、同じ会社で奮闘する夫の謙一さん(38)とつくり上げてきた、対話でアイデアを生み出して課題を乗り越えるスタイル。そんな夫婦の「オープンイノベーション」で、キャリアと家庭、どちらも大切にしていく働き方を追求している。

新たなコミュニケーションを模索

「ご提案を採用いただきました」「すごい!」「さっき、こんなことがあったんだけど――」。ぽんぽんと言葉が飛び交うのは職場のフロアではなく、パソコン画面。真紀さんが働く東京自動車営業第4部で広域の自動車ディーラーを担当するチームでは、最近導入されたオンラインのチャットツールが大活躍だ。在宅勤務を組み合わせた働き方でなかなか全員がそろわない状況が続くが、「離れていても同じフロアにいるような会話がまたできるようになり、一体感を感じています」と真紀さんは笑顔を見せる。

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中島真紀さんは子育て中だからと制限を設けずに挑戦する道を進む

2020年は春先から、新型コロナウイルス感染症の拡大で真紀さんのチームも大きな影響を受けた。ちょうど自動車保険の満期を迎えるお客様の契約更新に関する新たなプロジェクトを進めていた時期。担当しているディーラーが行っている電話中心のアプローチから、車検などで顧客がディーラーに来店した機会に対面でより良い提案をしてもらう取り組みで、チームを牽引したのは真紀さんだ。

担当する広域ディーラーは4都県に115の店舗を抱え、社内の他部店の担当者数十人が出入りする大所帯。新たな保険の提案プロセスを定着させたくても、関係者の足並みをそろえるのは簡単にはいかなかった。真紀さんは昨年、ディーラーにヒアリングを重ね、離れた他部店の担当者と定期的なオンライン会議を通してディーラーの思いを共有することで、関係者を一つの「チーム」にしていくことに取り組んだ。更新手続きはどうあるべきか、何度も話し合って目指す方向を合わせていき、一丸となって来店時の提案の方法や内容の改善を進めていた最中のコロナ禍だった。

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新型コロナウイルス流行の試練を乗り越えようと知恵を絞る

感染対策で人と人との接触は激減し、対面を前提とする戦略は見直しを余儀なくされた。「ここまでやってきたことが元に戻ってしまった」――。落胆は大きかったが、切り替えは早かった。今、真紀さんが取り組むのは、オンライン会議システムを活用した保険販売の研修の運営だ。感染対策で集合研修が難しいというディーラーの課題をキャッチ。再び関係者とオンラインのミーティングで、どうしたらディーラーの課題を解決できるかを議論。オンラインを活用してきたノウハウを駆使し、ウェブ講座と店舗での事前・事後の課題を組み合わせた実践的なカリキュラムを考案した。従来、店舗ごとに開催していた研修を、複数店舗をリモートでつなぎ、ロールプレイングを中心に双方のコミュニケーションができる内容に。真紀さんのもとには「楽しく、成長を実感できる」との声が届いているという。

自らを「転んでもただでは起きない」という真紀さん。昨年から今年にかけては、業務だけでなくプライベートでも大きな変化があった。約9カ月の育児休業を終えて2019年4月に職場復帰。子育てと両立しやすい時短勤務の活用や、事務担当として復職するという選択肢もあった。けれど、自分の描きたいキャリアを重ねるためには営業担当に挑戦すべきではないか――。真紀さんの出した結論は、従来の枠組みのなかで役割を選ぶのではなく、自分の強みを生かせる働き方に挑戦すること。それを実現したのは、夫婦での度重なる「会議」でのことだった。

ダイニングで「会議」

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自分の幸せと家族の幸せ、夢や「ありたい姿」を確かめ合い、「どうしたら実現できるか」を考える

産休前まで「やるからには全力で、そして楽しく」をモットーに、目いっぱい仕事をしてきた。育児休業のあいだは毎日、一日中子どもと向き合うなかで、母親として仕事をセーブしないといけないのではないかと心は揺れた。ディーラーの店舗を車で駆け回る。会食などの場でディーラーの課題や思いを丁寧に聞き取る。働く時間に制限のある育児中には、営業担当は難しい業務だと思われてきた。一方、自分のキャリアを考えたとき、かつて経験した事務担当者として再び働く姿も思い描けなかった。悩んだ末、「誰かが決めた役割に合わせるのではなく、自分ならではの役割をつくり出すべきではないか」と思い始めた。

復職が迫るなか、長女が寝た後、静かな時間が訪れると「よし、いまから話し合おう」。夫の謙一さんと何度もダイニングで向かい合い、話し合いを重ねた。一人の人間として、将来どうなりたいか。仕事で何を成し遂げたいか。お互いのキャリアビジョンを考え、真紀さんがフルタイムで復職した場合のシミュレーション。まるで仕事の会議のように客観的に課題を洗い出し、一つ一つ解決方法を考えていった。結果、謙一さんが朝の家事や子どもの世話を担当すること、早帰りの曜日を設けることなど具体的な対策が決まっていった。

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謙一さんは社内のセミナーで「パパ目線の働き方」を発信

真紀さんはこの話し合いを踏まえ、マネージャーと面談に臨んだ。フルタイムでどんな働き方ができるか。自身が培ってきた経験や強みを生かしてチームに貢献したいこと、復職に向けて整えている家庭内の態勢、将来めざす姿――。思いを伝え、これまでのように営業担当か、事務担当かを選ぶのではなく、役割の枠を超えた新たな働き方に挑戦することが決まる。

これは謙一さんにも挑戦だった。謙一さんは営業企画部・マーケティング室に所属し、保険商品のマーケティング戦略などを会社に提言していくことが主な業務。顧客インタビューなどの調査を企画し、結果を分析して提案資料に落とし込む。定型的な業務ではないため、なかなか計画的に業務を進めるのが難しく、育児とどのように両立していくか頭を悩ませた。

以前から、真紀さんが出産後も復職して仕事を頑張りたいことはわかっていたし、「仕事も育児も女性が思い描くかたちで実現できればいいのでは」と感じていた。長女が生まれ、子育ての面白さを知り、しっかり携わりたい気持ちも芽生えていた。謙一さんもマネージャーや同僚に自らの家庭環境や思いを伝え、ことあるごとに子育て中の働き方を話題にしたり、自宅に招いて子どもの様子を見せたり。情報発信や対話を繰り返し、周囲メンバーに理解してもらえるよう工夫を重ねた。

2019年4月、ついに二人三脚の両立生活が始まった。家事や子どもの世話は、事前にすり合わせた分担体制で。以前より仕事の時間に制限ができる部分は、工夫を凝らして移動中などスキマ時間の活用や、長女が寝た後に仕事のアイデア交換をするなど、夫婦のコミュニケーションの一環として楽しみながらカバーをめざした。事前の徹底した「会議」が奏功し、新生活はスムーズに回っていった。それは、コロナ禍の中でも混乱することはなかったと2人が振り返るほどだ。

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洗濯、皿洗い、長女の食事の手伝い・・・両立生活で家事・育児スキルはめきめきと伸びた

「キャリア道」で一歩前へ

子育てと両立した、フルタイムでの仕事。新たな働き方で走り始めた真紀さんにもう一つの転機が訪れる。自動車ディーラーを担当する営業部門の女性社員を対象として開催された「キャリア道(みち)」という社内研修だ。ロジカルシンキングやファシリテーション、プレゼンテーションなどのスキルを学び、組織をまとめるマネージャーのあり方や、マネージャーをめざしていくための課題や解決策などを考えていく。研修当日だけでなく、事前の課題図書やリポートに取り組み、現役マネージャーと幾度も意見交換していくハードな内容。そこでわかったのは、「夜間や休日でも何かあればいつでも対応するというマネージャーの働き方のイメージ」が、絶対ではないということだ。育休から復職するときに悩んだ、営業担当か事務担当かという二択がそうだったように。

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「新たなマネジャー像」を思い描く

「自分にもできるかもしれない」。真紀さんが就職活動で東京海上日動を選んだのは、結婚や出産などのライフイベントがあっても働きやすい会社を探していたから。就活当初は他業界の選考を受けていたが、そんな理想的な会社が見つからなかったなか、たまたま大学のゼミの会合でOGである東京海上日動の社員と出会い、先輩女性が生き生きと活躍している様子にひかれた。「将来はマネージャーとしてメンバーの働きがいや成長を後押ししたい」。それが今、真紀さんがめざす将来の姿だ。

謙一さんのキャリアビジョンもそこに重なり合う。「限られた時間をやりくりするのは大変だが、長い時間働けば良い仕事ができる、というのは未来の働き方ではないはず」。プライベートを大切にし、仕事のアウトプットも落とさない働き方を実践できれば「周囲のメンバーの働き方変革にも新しい風を吹き込める」(謙一さん)。

仕事と子育ての両立。新型コロナの混乱。未知の課題を徹底した対話と新たなアイデアで乗り切ってきた。めざす未来の働き方をかなえるため、きょうも2人の会話は弾む。

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これからも対話が2人の力になる

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