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「ずらし」で昼下がりのビストロ楽しむ 東京・広尾

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昼下がりの午後3時。レストランとしては珍しいこの時間にオープンする店がある。東京・広尾の「Bistro Nemot(ビストロ ネモ)」だ。

同店は、今年7月に誕生した駅近の複合施設「EAT PLAY WORKS(イートプレイワークス)」に入居する。同施設には、ミシュラン星つき店出身シェフの店から、予約がなかなか取れないことで知られた店の新業態まで、味自慢の17店が1、2階のレストランフロアに集結する。各店は営業時間、定休日が異なるが、その中でいち早く開く店の一つがミシュラン二つ星店「レフェルヴェソンス」を経営するCITABRIA(サイタブリア)傘下の店、Bistro Nemotなのだ。シェフはレフェルヴェソンスに6年在籍、スーシェフも約3年務めた根本憲仁さん。同社の独立支援モデル店だという。

「コロナ禍で、午後3時から夜11時までと営業時間を長く取れば、お客様がいらっしゃる時間がばらけて、ゆっくり密にならずに過ごせると考えた」と根本さんは話す。土日は店を開けてほどなくすべての席が埋まってしまうこともあるらしい。

レフェルヴェソンスの料理はモダンフレンチだが、Bistro Nemotのメニューに並ぶのは、肉の赤ワイン煮などクラシックなフランス料理。「最初は、モダンな料理にしようかと思ったのですが、コロナ禍で色々なシェフと話す機会を得るなどして、考えが変わりました。40代、50代のシェフは先端的な料理を作りながら昔から受け継がれてきた料理も知っている。一方、20代の料理人は新しい料理の形を生み出しているけれど、『王道』料理はあまり作らない。だから、30代の僕がそうしたものを下の世代に伝えていきたいと思ったんです」(根本さん)

加えて、EAT PLAY WORKSの飲食店フロアは、カウンター席を中心とした店舗が立ち並ぶ横丁スタイル。敷居が低く入りやすいので、普段はフランス料理店に足を運ばないような客層にも、クラシックな料理を知ってもらえると考えたのだ。

人気メニューの一つ「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」には、仕込みに2日かける。1日目は肉をきれいに掃除して、赤ワインに漬け込み一晩置く。こうすると肉の繊維に水分が入り込み、肉を軟らかく感じるようになるという。2日目の作業でこだわるのは火入れ加減だ。表面を焼いてから、水分が出てパサつかないようぎりぎりの温度で4時間煮込む。こうして客席に運ばれる肉はトロトロに仕上がり、「こんな赤ワイン煮込み食べたことない」と驚く客も多いという。

ジャガイモのグラタン、ドフィノワは、もともとレフェルヴェソンスのまかないとして根本さんが作り、評判となった一品。薄切りのジャガイモを重ねて層にしたグラタンだが、根本さんはこの野菜の味をしっかり感じられるよう、わざと厚めにスライスする。シンプルな料理だからこそ、ジャガイモの火入れ加減、上にのせるチーズの量などには細心の注意を払う。「基本が大事とよく言いますが、本当にその通りだと思う。単純にすればするほど難しい」。ちなみに、通常この料理に用いるニンニクは、同店では使わない。早い時間に来店するのは主に仕事の合間に訪れる客や子どもを迎えに行く前の母親などと言うから、においを気にせず食べられるドフィノワは、より広い客層が心ゆくまで楽しめる料理だろう。

看板メニューとするつもりはなかったのに、大人気となっている料理もある。ウフマヨだ。半熟卵にマヨネーズのソースをとろりとかけた伝統料理だが、同店では遊び心を加え、わざと卵をクレープで包み隠している。使用するのは濃厚な味わいの栃木のブランド卵「極」。クレープ生地にナイフを入れると、だいだい色の黄身が流れ出す。この料理、実は卵にはだしをしみ込ませており、ソースには卵、ハーブ、マスタードなどのほか、太白ゴマ油(ゴマを焙煎せず使用した、ゴマの香りがない油)を用いる。クラシックなメニューながら、和食材を多用するレフェルヴェソンスで腕を磨いたシェフならではの発想の料理だ。

さて、EAT PLAY WORKSのレストランフロアの大きな楽しみは、気軽に店がはしごできることだ。Bistro Nemotの客も他店にも足を運ぶことを考え、ここでの食事をワイングラス1杯に料理2品ほどにとどめる客も目立つという。施設内にはそばやとんかつ、すしから中華、スペイン料理まで多種多様な店が並ぶが、その中から個性的な2店を紹介しよう。

まずは、ベトナム料理と日本酒のマリアージュを提案する「An Com(アンコム)」。2017年にオープンした東京・外苑前のモダンベトナム料理の人気店「An Di(アンディ)」の姉妹店だ。オーナーはソムリエの大越基裕さん。An Diは、フランス料理を思わせるコースメニューにワインを中心としたドリンクコースを合わせるスタイルが人気の店だが、An Comはよりカジュアルな店。アラカルトで料理を楽しむ客が目立つ。

メニューにはパパイアのサラダや生春巻きといった、おなじみのベトナム料理が並ぶが、食材はできるだけ日本のものを使用している。例えば、ベトナムの魚醤(ぎょしょう)ニョクマムの代わりに同店で使うのは秋田のしょっつる。料理も、一見スタンダードなベトナム料理のようだが、実は「日本でしか表現できないベトナム料理」だ。

例えば、「生春巻きには、エビや葉野菜のほか、マリネしたニンジンやオクラ、パイナップル、しば漬けなどが入っています。甘みや塩気、酸味といった味わいを素材のバランスで調え、触感の面白さも加えて組み立てた料理なんです」と大越さんは話す。付けだれも、しょっつるに国産のオーガニック黒糖、ユズこしょうやスダチの果汁を合わせた複雑な風味のものだ。

An Diとは異なり料理にワインではなく日本酒を合わせたのは、「日本酒を飲みたいというとき、どうして和のアテしかないんだろうと思ったから」と大越さん。「お刺し身を食べながら杯を傾けるというのもいいですが、そうではない世界を提案することで日本酒を楽しんでもらえる機会を広げたかったんです」

日本酒とベトナム料理とは意外な組み合わせに思えるが、「もともと、乳酸菌を使って造られるお酒なので、例えばベトナム料理によく使われるココナツミルクとすごく相性がいい。中でも『生もと造り』の日本酒は、自然の乳酸菌を取り込んで造られるために、乳清のような感じがでる。An Diにはココナツミルクを使った生春巻き用のディップがあるのですが、それだけで日本酒がすすむぐらいです」

An Comには、同店のために造られたスパークリング日本酒もある。滋賀の蔵元・冨田酒造による「七本鎗(しちほんやり)」ブランドの泡酒だ。「スパークリングタイプの日本酒は基本的にちょっと甘い。でも、あまり甘いものを食事の最初に口にすると、飲み進めない。僕はもう一歩酸が引っ張るような味の構成のスパークリングがいいなと思っていたところ、冨田酒造が造っていたお酒がイメージに近いと思った。そこで、このお酒のアルコール発酵を伸ばしてもらい糖分を落とし、酸が味の主体となる酒を造ってもらったんです」(大越さん)

香りは日本酒だが、味はスパークリングワインというこの酒にマッチするのは、パパイアサラダ。ドレッシングには、かんきつ類の果汁と酒かすを使用している。ベトナム料理の定番グリーンパパイアのサラダなのだが、「基本的にグリーンパパイアは味がしない。面白くないので、完熟のパパイア、ぬか漬けのグリーンパパイアと3種類のパパイアを合わせています。うま味はあるけどフレッシュな味わいで脂質もないので、同じような清涼感のあるお酒が合う。だから、『七本鎗』のスパークリングがちょうどいいんです」

さて、海外への渡航がままならない中、同施設には米ニューヨークで評判をとるメキシコ料理店もお目見えした。2018年に開店後、約5カ月でミシュラン一つ星を獲得した「OXOMOCO (オショモコ)」で、日本初出店となる。学生時代の同級生と同店を立ち上げたオーナーのジャスティン・バズダリッチさんは、広尾のOXOMOCOを経営するソルト・グループのエグゼクティブシェフ、米沢文雄さんの友人。米沢さんが、ニューヨークの三つ星(当時)フレンチ「ジャン・ジョルジュ」に在籍した際の同僚であったという。

「彼はメキシコ料理がすごく好きで、よく一緒に食べに行っていました。OXOMOCOは好きが高じて彼が作った店ですが、料理の価格帯もお店の雰囲気もカジュアルで、そもそもはミシュランで星を取ろうなんて考えていなかった店なんです。ですから、星を取ったと発表されて、本人たちは『なんでうちが!』とびっくりしたそうですよ」と米沢さんは話す。

ミシュランの星を獲得するぐらいだから、さぞかしモダンなメキシコ料理かと思いきや、「彼の料理は、現地の料理を踏襲したもの」と米沢さんは言う。「ベースは現地料理だけど、ジャスティンの料理技術やアイデアを駆使して仕上げたら、『本物』よりおいしくなってしまった。そんな料理なんです。現地料理がほかのエッセンスや技術が入ることですごく昇華することがありますが、OXOMOCOではすごくそれがはまったんですね」

例えば、トウガラシをそのままペーストにするのではなく、一度焼いて香りを引き出してから使う。肉料理ならば、火入れの温度をコントロールしてしっとり仕上げる。アボカドのディップ、ワカモレは、現地ではその都度感覚的に材料を合わせていたりするため味のブレが大きいが、それを高い水準でブレなく提供する。シェフが自身の経験をフルに生かして、一つひとつを丁寧に仕上げることで、同店はあっという間にミシュランの星に到達した。

中にはビンチョウマグロの刺し身(ニューヨークではメバチマグロを使用)を、揚げたコーントルティーヤの上にのせたユニークな料理も。刺し身には、サルサマチャというゴマとトウガラシを使ったオイルベースのソースをかけている。なお日本の店で使われるビンチョウマグロは漁業改善プロジェクト(FIP)にのっとりはえ縄で漁獲された魚。その中でも、もちもちした身が特徴の「もちビンチョウ」というブランド魚を使用する。米沢さんは、日本の水産資源のサステナビリティに取り組むシェフらのグループ「シェフス フォー ザ ブルー」のメンバーであり、こうした食材も意識的に用いる。

OXOMOCOの隣には、米沢さんによるベジタリアン料理専門店「Salam(サラーム)」もあり、ずらし営業を大いに活用しはしごを楽しもうと思っても、気になる店を一度には回り切らないこと必至。「今度はどの店を組み合わせようか」と考え幾度も通ううちに、お気に入りのはしごを見つけるのも一興だろう。

(フリーライター メレンダ千春)

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