癖になるけど、体も気になる宅配ピザ 賢く食べるには
カラダについてのお悩み、ありませんか? 体調がいまいちよくない、運動で病気を予防したい、スポーツのパフォーマンスを上げたい…。そんなお悩みを、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが解決します! 今回は、共働きで食事の準備が大変という方から、宅配ピザを頼んでもいいか、という相談です。
食事の準備が大変… 宅配ピザを頼んでもいい?
40代、共働きの兼業主婦です。
コロナをきっかけに、家事の負担がのしかかるようになりました。
特に食事の準備が大変です。以前、ランチといえば、夫は外食やコンビニ、2人の子どもは給食でしたが、外食自粛の期間中は、家族全員分を毎日3食用意しなければならなかったのです。
現在はというと、夫は在宅勤務が中心になり、出社の日でも「外食を控えたい」とお弁当を持っていくようになりました。私も在宅勤務が続いていて、夫と自分の分のお昼を用意しています。
子どもたちの給食が復活したのはありがたいのですが、家族の食事を作り続けて、もうヘトヘトです。仕事も山積みになっていて、夕飯を作るとすぐ、自分だけかきこんで、その後、深夜まで仕事という生活が当たり前になっています。
「たまには子どもが好きな宅配ピザで済ませちゃおう!」と思う半面、育ち盛りの子どもたちや、体重を気にしている夫に対し、ジャンクフードはよくないかな、手抜きだと思われるかな、などといろいろ考えて、ためらってしまいます。
私もピザは好きなので、たまには頼みたいのですが…。
宅配ピザは避けたほうがいいでしょうか。また、トレーナーさんがお勧めの、手軽に食べられる健康食ってないでしょうか?
月に一度や、2週間に一度なら問題ない
フィジカルトレーナーという仕事をしている私ですが、実を言うと、宅配ピザは大好きです(笑)。
たまに、無性に宅配ピザを食べたくなります。特に、海外のドラマや映画を見ているときです。
ピザをつまみ、ワインを飲んで…というシーンが出てくると、大好きなピザの味を思い出し、いてもたってもいられなくなります。あれは、本当にダメです(笑)。
とはいえ、さすがにドラマを見るたびにピザを食べるのはまずいので、私は「月に1回程度、食べる」と決めています。
理由は2つあります。1つ目は、どんなに好きな食べ物でも、しょっちゅう食べていては、ありがたみが薄れてしまうから。大好きなだけに、月に1回の楽しみとしてとっておく、という感じです。
2つ目は、月に1回程度でしたら、たとえピザ1枚を1人でたいらげたとしても、健康上の害はほとんどないためです。
ピザを食べることに罪悪感があるのは、相談者の方が言うように「ジャンクフード」というイメージが強いからだと思います。
でも、頻度と食べ方さえ気をつければ、月に一度、あるいは2週間に一度くらいピザを食べても、太ることはありませんし、健康上の問題も起きないと思われます。
炭水化物はそれほど多くはなかった
それでは、ピザの材料を見ていきましょう。生地は小麦粉で、それ以外に使われるのは、チーズ、トマトソース、肉、魚、野菜、そして油などです。
どうでしょう? 実はピザのなかに献立の基本である、「主食」「主菜」「副菜」がそろっていることに気づいたでしょうか。
栄養価の側面から見ると、脂質とたんぱく質が多めで、意外にも炭水化物はそんなに多くありません(表参照)。ちなみに、お茶わん1杯に含まれる白米の炭水化物量は55.7g(精白米150gで換算)。
マルゲリータのMサイズを2人で食べたとしても、摂取カロリーは1人当たり約480~590kcalと、1食分としては決して多すぎではありません。
宅配ピザでは、生地を「パン生地タイプ」と「クリスピータイプ」から選べることが多いのですが、パン生地タイプを選ぶと脂質が抑えられ、クリスピータイプを選ぶとカロリーと炭水化物を抑えられるといえます。
ちなみに、私は「パン生地」派です(笑)。パン生地タイプは、クリスピータイプと異なり厚みがあるので、食べ応えがあります。そのため、少ない枚数でも満腹になり、食べ過ぎないというメリットもあると思います。
脂質のとり過ぎには注意!
そもそも、宅配ピザが「不健康」だと思われる理由は何でしょう?
一番の問題は、先ほどの表にあるように、チーズなどに含まれる脂質の多さです。また、脂質が多いだけでなく、「狂った油」などの異名を持つトランス脂肪酸[注1]が含まれるのではないか、と心配する人もいます。実際、厚生労働省による調査[注2]でも、ピザやハンバーガーはトランス脂肪酸含有量が多い傾向があると報告されています。
[注1]トランス脂肪酸とは脂質の構成成分である脂肪酸の一種。天然由来の肉や乳製品に含まれるのはわずかで、主に植物油からマーガリンやショートニングを製造する工程などで生じる。
[注2] http://www.fsc.go.jp/sonota/trans_fat/iinkai422_trans-sibosan_hyoka.pdf
さまざまな研究から、トランス脂肪酸の摂取量が多いと、血液中の悪玉コレステロールが増加しやすくなり、心血管系疾患のリスクを高めてしまうことが明らかになっています。
そのため、WHO (世界保健機関)では、トランス脂肪酸の摂取を、総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう勧告しています。
食品中のトランス脂肪酸含有量は世界的に減少傾向にありますが、ジャンクフードを食べる機会が多いアメリカでは、毎日の食事からトランス脂肪酸をとる機会が多いので、商品にその含有量を記載することが義務づけられ、「許容量」がきちんと決められています。
一方、日本の厚生労働省は、トランス脂肪酸の摂取許容量を決めていません。それは、日本人がトランス脂肪酸のリスクに無頓着だからというより、健康を害するほどの量をとっていないからです。
厚生労働省が発表するデータによると、日本人のトランス脂肪酸の摂取量の平均値は、総エネルギー摂取量の0.3%です[注3]。
[注3]厚生労働省「トランス脂肪酸に関するQ&A」より。
さすがに、アメリカ人のように、週に何度もジャンクフードを食べたり、油をとりすぎたりする食生活を送っていれば問題があるかもしれません。ですが、米に味噌汁、そしておかずという日本の一般的な食生活を送っている人が、ピザを月に一度、あるいは2週間に一度食べるくらいなら、健康への影響は少ないと考えられます。
サイドメニューで栄養を補えばバッチリ!
ただし、栄養バランスから見ると、ピザだけ食べて終わり、では心配かもしれません。
ピザに含まれる主な栄養素は、炭水化物(小麦粉)、一部のビタミン類(トマトソースやトッピングの野菜)、たんぱく質(チーズ、肉、魚)、カルシウム(チーズ)です。逆に足りないものに、食物繊維、鉄分、ビタミンB群とビタミンCなどが挙げられます。
ですから、宅配ピザのほかに、サイドメニューでこれらを補えばOKなのです。しかも、「宅配ピザを頼むことに罪悪感がある」のなら、少し手間をかけて1品だけ作るというのはいかがでしょうか?
そこで、栄養士の方にお願いして、ピザの栄養を補うサイドメニューとして、「きのことワカメのオートミールスープ」を考案してもらいました。オートミールは食物繊維たっぷりで、ビタミンB群や鉄分などが豊富なのでお勧めです。
さらに、バナナやキウイなどのカットフルーツも加えれば、栄養バランスはバッチリです! これで、「栄養が偏ったジャンクフード」ではなく「バランスの良い食事」になります。
宅配ピザを頼むときのサイドメニューというと、フライドポテトやチキンや、デザートにアップルパイやアイスクリームを注文したくなりますが、それはアウトです。
このスープのレシピと、栄養価のグラフを載せておきますね。私も実際に作ってみましたが、簡単にできておいしかったです。
【材料】(1人分)
オートミール……小さじ1杯
かつお節……大さじ1杯
カットわかめ……小さじ1杯
しめじ……20g
水……150cc
しょうゆ……少々
【作り方】
カップに水としめじを入れて電子レンジで2分程度加熱。しめじが十分加熱されたら、オートミール、かつお節、カットわかめも入れてよく混ぜる。しょうゆで味を調えて出来上がり。
※複数人分作るときは、鍋で作るほうが効率的。オートミールは、フレーク状のものは加熱なしで使用できますが、加熱が必要なものは、しっかり煮込む必要があるので、購入の際に注意しましょう。
※グラフは「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における30~40代女性で身体活動レベルが「II(ふつう)」の人の1食当たりの必要量を100とした場合。
相談者の方は、家族のために毎日食事を用意していらっしゃいます。そんな方が、1カ月に一度くらい宅配ピザを頼んだって、手抜きでもなんでもありません。
それに、1品付け加えるだけで栄養バランスも優れた食事になるのですから、ぜひ罪悪感を覚えずに、宅配ピザを頼んでいただければと思います。子どもたちも、そして恐らくお父さんも、喜びますよ。
宅配ピザの健康への影響が心配な人へ…
▼月に一度や2週間に一度、ピザを食べても健康への影響は少ない
▼ピザは栄養価としては脂質とたんぱく質が多め、食物繊維が少ない
▼1品だけ手作りして栄養を補えばなおよい
▼食物繊維とビタミンB群、ミネラルが豊富なスープなどがお勧め
(まとめ 長島恭子=フリーライター、協力 安西仁美=管理栄養士、図版 増田真一)
[日経Gooday2020年10月15日付記事を再構成]
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者/PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー。フィジカルを強化することで競技力向上やけが予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。元卓球選手の福原愛さんなど、多くのアスリートから絶大な支持を得る。早くからモチベーションの大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍。『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。
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