日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/11/16

きっかけはソーシャルメディア

この発見のきっかけとなったのは、2018年初頭、ケーララ水産海洋大学の魚類研究者で、論文の共著者でもあるラジーブ・ラガバン氏が、インドのソーシャルメディア上に投稿された写真を目にしたことだった。そこに写っていたのは、ある人物が、自宅の裏庭にある井戸で捕まえた奇妙な魚だった。

ラガバン氏はその写真をブリッツ氏とシェアしたが、ブリッツ氏にはその魚の種も、属も、科も、「何もわからなかった」という。ラガバン氏らがさらに多くの標本を収集した後、ブリッツ氏はこの魚を詳しく調べるためにインドを訪れた。

2019年に学術誌「Zootaxa」に発表された最初の論文では、この魚は新たな種および属とされ、学名「Aenigmachanna gollum」、通称「ゴラムスネークヘッド」と名付けられた。その後まもなく別の研究者が、一体の標本に基づいてこの属で2つめの種「A. mahabali」を発見し、こちらは「マハバリスネークヘッド(Mahabali snakehead)」と呼ばれることになった。

コンピューターで描画したゴラムスネークヘッドの骨格。解剖学的な研究から、この種(およびその姉妹種)が、これまで知られていなかった分類学上の科「Aenigmachannidae」に属していることがわかった

さらなる進展があったのは、ブリッツ氏らが、ケーララ州の街コチの北にある農地を訪れたときのことだ。深夜、彼らはその場所で、水を張った田んぼの水面に浮かび上がってくるゴラムスネークヘッドを見つけた。

ブリッツ氏らが彼らの体の構造と遺伝的性質について詳しく調べたところ、この魚はまったく新しい科に属していることが判明した。ブリッツ氏が行った分析の結果は、この魚たちが、アフリカ大陸とインド亜大陸が分かれ始める約1億2000万年より前に、近縁種であるタイワンドジョウ科(Channidae、通称スネークヘッド、ライギョ)から分岐した可能性があることを示していた。

タイワンドジョウ科の魚は50種以上存在し、アジアとアフリカ各地の小川や湖に生息している。

地下の魚に目と色がある不思議

ドラゴンスネークヘッドの仲間は「幾つもの原始的な特徴」を有しており、まさしく「生きた化石」と呼ぶにふさわしいと、米ワシントン特別区にあるスミソニアン国立自然史博物館の魚類学者デビッド・ジョンソン氏は言う。

ドラゴンスネークヘッドの原始的な特徴としては、浮袋が短い、肋骨のついた椎骨が少ないことなどが挙げられる。これは彼らが通常のライギョよりも特殊化していないことを示している。