――石坂家には多くのエスタブリッシュメントの方々が集まられたでしょう。オークションの優雅な雰囲気と重なります。

「確かに昔はオークションといえば、ドレスコードはブラックタイが当たり前でした。世界的にオークションがイベント化したのは1958年が最初。ロンドンのサザビーズのギャラリーで、ニューヨークの銀行家ゴールドシュミットが保有するすごいコレクションが出品され、(女優の)エリザベス・テーラーらVIPをお招きして、着飾った紳士淑女が集まるきらびやかなイベントに仕立てたのです。今でも高額作品を扱うイブニングセールは招待状が必要で、華やかなファッションショーのようになります。とはいえ、日中のセールは出入りが自由でカジュアル。スタバ(スターバックス)のコーヒー片手に新聞を読みながら回っている人がいるほどです」

「バンクシーは作品数が少ないけど、話題性は一番。あれほど新聞が宣伝してくれるアーティストはいません。アート市場が活気づきますよね」

「少なくとも僕がこの世界に入った20年前は、せり上げていくオークショニア(競売人)はブラックタイでしたが、いまはそうでもない。僕だってオークショニアの隣に座っているときに、ノータイのことがあります。ギャラリーで作品の下見をしてもらうときに、来場者にシャンパーニュやフィンガーフードを提供することも増えていますが、これも最近のこと。投資銀行やファッション業界から引き抜いた人たちが、オークションのあり方を少しずつ変えているんです」

オークション、ライブからネットへ

――オークションハウスもカジュアルでおしゃれな雰囲気になりましたよね。とはいえ、コロナによってライブオークションは軒並み中止に追い込まれました。

「業界はパニックになりましたよ。作品を下見できませんし、アートフェアは開かれず、画廊も休業を余儀なくされました。ところが、明るい道が見えてきました」

――ネットオークションですね。

「そうです。ライブオークションは印象派、中国陶磁器、宝飾など50ほどある分野でそれぞれ開催シーズンが異なります。たとえば印象派や現代美術は大きなオークションが年に6回。これらが一時的になくなってしまいましたが、それを上回る回数でネットオークションを開いています。ネットオークションが盛んな時計などは毎週のように開かれています」

「最近、紙のカタログをなくしました。調査をすると半数が紙ではなくデジタルカタログを見ていることがわかったから。僕は寂しい気もしますけれど、画期的なことです」

――サザビーズは19年に就任した新オーナーがIT業界出身でもあり、いち早くネットオークションに取り組みましたね。

「前からやってはいるんですけどね。コロナによって、3~7月のネットオークションの落札金額は前年同期の6倍に増えました。6倍といっても合計で300億円程度ですから、まだライブオークションの一晩分くらい。それでも、内容は激変です」

――どういうことが起きましたか。

「ネットオークションの参加者は毎回3分の1が新規客。全体の4割が40歳以下。驚きました。ほかの業界で起きているのと同じように、あらゆる面で新陳代謝が進んでいる。そして現代美術が売れる傾向がさらに強まっています。ネットで売れる作品の最高額はこれまで1000万円くらいが上限でした。それが今では2億円の作品も売れます」

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