あいみょん 曲の作り方は14歳のころから変わらないあいみょんインタビュー(下)

日経エンタテインメント!

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あいみょんが楽曲制作術やコロナ禍における心境について語るインタビューの後編。楽曲は作詞作曲に強いこだわりを持ち、14歳のころから変わらない作り方を続ける一方で、アレンジに対する姿勢は柔軟。ニューアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』が生まれた過程を詳しく語ってくれた。

1995年生まれ、兵庫県出身。音楽関係の仕事に就く父親の影響で、幼少の頃より音楽に触れて育つ。2016年11月にシングル『生きていたんだよな』でメジャーデビュー。シングル『マリーゴールド』(18年8月)は、20年2月にストリーミング再生回数が2億回を突破(写真:中川容邦)

あいみょんの曲作りは、言葉と旋律が一緒に出てくることが多く、そのときに生まれた組み合わせをとても大切にしているそうだ。跳ねるようなビートが印象的な『チカ』では、歌い出しで「A.P.C.」というフランスのアパレルブランドの名前が出てくる。固有名詞を使用するには許可が必要なこともむろん承知の上で、代替の言葉を用意するなどの安全策を取らずに、そのまま制作したという。

「曲と歌詞は同時進行。コード進行に合わせて口をついて出てきた言葉を歌詞にしていきます。例えば、Gコードをじゃんじゃか弾きながら、パッと出てきた言葉から物語を作る。14歳のころから変わらない作り方です。

ギターをかき鳴らしていたら、口をついて出てきたのが『A.P.C.の黒い財布』という言葉。そのリズムがめちゃめちゃ心地よくて、そこから物語を書き始めました。ただ、メジャーデビューして学んだことで、『固有名詞には許可がいる』(笑)。でも、A.P.C.以外は考えられなかったので、確認して許可してもらえなかったらこの曲はなしにしよう、捨てようと思っていました。許可していただけた寛大さに感謝ですね」

歌詞や旋律に強いこだわりを示しつつ、アレンジに対する姿勢は柔軟だ。このバランス感覚によって、普遍的でありながら古臭くない“あいみょんサウンド”が醸成されていくのだろう。

「作詞作曲は作った当時のものですが、アレンジはレコーディングするときにリアルタイムでアレンジャーさんと一緒に創り上げていきます。これまではアレンジをお願いする際に、『お化け屋敷みたいな』とか『ぼわぼわっとした感じ』とか、感覚でしかイメージを伝えられなかったんですが、私も経験を重ねて少しずつ具体的に伝えられるようになりました。

(編曲家の)田中ユウスケさんは、これまでシングルの表題曲を主にアレンジしていただいていました。本作では『チカ』や『黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を』などのアルバム曲もお願いしたら、すごく楽しそうで(笑)。『黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を』では、ソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉さんにオルガンとアコーディオンで参加していただいたんですが、昔から聴いていたバンドなのでうれしかったですね。急きょお願いしたにもかかわらず、たくさんのフレーズを提案してくださって、『プロやな』って感心しました。曲の終わりに鳴るアコーディオンの音には、スタジオにいた皆が感動のあまり拍手して。『このアコーディオンがないアレンジなんて、もう想像できないね』って、すごくいい時間でした。

『裸の心』は、トオミヨウさんのアレンジ。初めはシングルにする予定はなかったんですが、ツアー先のホテルでアレンジを聴いたら、感動して涙が出ちゃって。スタッフさんと話をして、配信シングルで出すことにしました。デモの段階からピアニカの音が入っていたんですが、『これは絶対に入れてほしい』とお願いしました。

あと、ラストの『そんな風に生きている』でグロッケン(鉄琴)を叩きました。小さいころから木琴や鉄琴の音が好きだったので、スタジオにあったグロッケンで遊んでいたら『この曲は簡単だから叩いてみたら』と。実際にやってみると、歌いながらギターを弾くのとは違ってリズムの取り方がすごく難しかったですね。ただ、歌とアコースティックギター以外で、初めてクレジットに名前が載りました(笑)」

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