ガールズ戦士・イクメンライダー 最新ヒーロー事情
少子化の進行にもかかわらず、テレビと玩具を中心とした子ども向けエンターテインメント業界は、マルチ展開や親子・海外市場の開拓など知恵を絞った展開をしている。各コンテンツが目指そうとしている未来像をシリーズもの中心に探った。
子ども関連市場は年々拡大し2018年の規模は3兆円強。日本玩具協会によれば、国内玩具市場も14年から6年連続8000億円突破と好調な一方、19年の日本の年間出生数は90万人を割り込んでいる。
進む少子化 マルチな接点
テレビ東京系の女児向け実写版特撮テレビドラマシリーズ『ポリス×戦士 ラブパトリーナ!』のプロデューサーで電通の遠藤哲哉氏は「少子化は避けて通れない」と話す。その上で「玩具売り場や雑誌・本、イベント、映画、ライセンス商品を含め、子どもとの接点を増やすマルチソース化や、グローバル化」を方策にあげた。
遠藤氏らが取り組む「ガールズ×戦士シリーズ」は17年にスタートし、放送中のラブパトリーナが4作目。テレビや玩具・グッズを軸に、イベントやヒロインたちのアーティストデビュー、映画、ゲームに展開を進め、中国でキッズ向けの配信も展開中。
女児と戦士を組み合わせるコンセプトは、玩具と連動したストーリーを模索するタカラトミーと、女児向けの新ヒロイン像の提供を発想した映像制作会社の意見を融合して生まれたという。
映像ではVFX技術を駆使し、ファンタジックな世界観を作り上げている。ヒロインが持つ変身アイテムや攻撃アイテムは、公式玩具として手に入る。さらに劇中に登場するマスコットも実写に変わった。これらで女児の"なりきり欲"を刺激する。
少女たちの熱量を感じられるのがイベントだ。ショッピングモールで週末に開催されるキャラクターショーのステージや、ヒロインたちのCDのリリースイベントとして展開。イベント集客は、シリーズ累計約50万人に及ぶ。
過去4作のヒロインたちは全員ダンススクールの出身。遠藤氏は「女の子が憧れるヒロインを考えたときアイドル性は不可欠で、歌とダンスは欠かせない」と話す。
現在までの4番組に出演のメンバーは番組ごとにグループとしてアーティストデビューし、19年には番組の枠を超えて集結した「Girls2(ガールズガールズ)」も結成され活動中だ。番組卒業生の新展開は、成長につれ番組を卒業する視聴者の子どもたちと、長期にわたり接点を持ち続けられる可能性につながる。女児向けの実写版コンテンツが女性アーティストの登竜門になるかもしれない。
ライダー初の子連れ"イクメン"登場
一方、男児向きコンテンツでは、9月に『仮面ライダーセイバー』(テレビ朝日系)がスタートし、注目を集めている。主人公は"文豪にして剣豪"。仮面ライダーの力を手に入れた小説家が、本を巡る戦いに参加し、聖剣に選ばれた剣士たちと共に世界を守るファンタジー活劇だ。
敵と戦いを繰り広げる異世界は最新映像技術をふんだんに使って描かれ、年間で10人以上の仮面ライダーが登場すると予告されている。仮面ライダー史上初めての子連れ"イクメン"ライダーも登場し、この時代らしい描き方もされている。
3月に始まった『魔進戦隊キラメイジャー』(テレビ朝日系)では、音楽やダンスの活用が加速する。番組公式TikTokアカウントを開設し、主人公たちがエンディング曲のサビに乗って踊る"キラメイダンス"を披露した。9月13日からは"キラメイ音楽祭"としてエンディングで毎週1曲ずつキャラクターソングを公開中だ。
子どもと大人のエンターテインメントのヒットに境目がなくなっているのも昨今の状況。タカラトミーは今月、親世代もターゲットにしたシューティングゲーム「キャップ革命ボトルマン」を発売する。ペットボトルのキャップを発射して各種競技を楽しむシューティングホビーだ。
93年に発売されたビー玉を発射する「ビーダマン」に慣れ親しんだ世代は懐かしさを覚える玩具で、9月15日の情報解禁時には、Twitterトレンドで1位を獲得しているという。
(日経エンタテインメント!11月号から再構成 文・横田 直子)
[2020年10月24日付 日本経済新聞夕刊]
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