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三谷幸喜 香取さんは「芝居に邪心がない」のがいい

『誰かが、見ている』研究(下)

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

三谷幸喜が脚本・演出、香取慎吾が主演のシチュエーションコメディ(シットコム)『誰かが、見ている』(Amazonプライム・ビデオ)。香取ふんする、予想もしない失敗を繰り返すフリーターが巻き起こすドタバタ劇だ。三谷にとっては本作が初のネット配信ドラマ。自身の思い入れが特に深いシットコムを制作するに至った経緯や意図を聞いた。

「僕の中で、香取さんと何かやりたいというのは常にあるのですが、今回Amazonさんから香取さんでドラマをとお話をいただいたときに最初に浮かんだのは、僕の作品では振り回される役が多い香取さんを今度は思いきりトラブルメーカーにしてみたいということ。その発想が1つの始まりです。

そこから主人公のキャラを考えていきました。例えば、朝起きて歯を磨いて朝食を食べて……という当たり前の動作自体が、おかしくて仕方がない、大げさに言えば、生きているだけで笑える香取さんを見てみたかった。日常の何気ない風景でも、僕が書いて香取さんが演じれば、絶対に面白い『1人芝居』になると思いました。

それと僕はセリフを書くのが仕事なので、どうしても言葉中心の笑いになりがち。だから今回は、あえてセリフのない部分でどれだけ笑いが取れるかに挑戦してみたかった。全くセリフなしは無理ですが、第1話や第4話、最終話もそうかな。かなりセリフのない長いシーンに、あえてチャレンジしてみました。配信で世界に向けてということを考えると、正しい選択だったように思います」

「その結果、香取さんのコメディアンとしての引き出しをたくさん開けることができたと思います。具体的に言うと1話では、パソコンのキーがはずれて戸棚の下に入ってしまった。それをどうやって取り出すかというくだりだけでワンシーンやりました。あと、ソファの隙間に手が挟まって取れなくなる。これも延々とやった。まさに香取慎吾1人芝居。この面白さは彼にしか出来ない。

ちなみにソファのくだりはもともと台本にはなかったんですが、もう1つ笑いが欲しいと現場で思って、リハを中断して彼と一緒に考えました。こういう動きのギャグって台本に書きにくいんです。まさに現場で生まれた笑い。香取さんとでなければ出来なかったことですね」

眼からうろこだったのは、配信ならではの、こんな環境。

時間を気にしなくていいからこそ、できたこと

「Amazonさんに言われたのは、時間をあまり気にしなくていいと。30分枠だけど、回によっては35分に伸びてもいいし、逆に短くても構わないと。これはうれしかった(笑)。さっき挙げたシーンだって、テレビだと絶対にありえないですから。その間、全くストーリーが進展しないわけだし。普通は撮ってもカットか短縮。時間を気にしなくていいからこそ、できたこと。Amazonさんには感謝ですね」

30分で1話完結のシットコムは、三谷が大好きなフォーマット。が、メディアが変われば、見られ方も変わる。今回はその"見られ方"に三谷流の遊び心を散りばめた。

「シットコムというもの自体はスタイルとしては古い。アメリカのテレビドラマ初期に生まれた手法ですからね。それから様々なタイプが生まれ、形も進化してきた。だから僕も新しいシットコムを作ってみたかった。

基本条件として観客の笑いが入ること以外に、場面設定が毎回同じ、主人公が成長しない、連続性がない、といったものが挙げられるんですが、それをすべて裏切りたかった。まず、本編とは別の短い映像として、本編のマンションのシーン以外に毎回、カメラが外に出て、舎人くん(香取)がバイト先で引き起こす騒動が描かれる。さらに全く関係ない海外のシーンもちょこちょこ入ってくる。こちらは見ていればだんだんその意味が分かる仕組みになっています。

それから連続性。最初、僕は1話を配信したら2話は1週間後なのかなと思っていたんですけど、配信を見る方の視聴スタイルって基本、"一気見"なんですね。このドラマも全話いっぺんに出すとAmazonさんに言われて。それならば、一気見したくなるようなものにしようと考え、『1話完結』でありながら、次はどうなるという『連ドラ』としての面白さも加えてみました。主人公も最終回に及んで成長を遂げます。だから、『誰かが、見ている』はシットコムと言っておきながら、全くそのルールに沿っていない、約240分の長いドラマ。でも見終わった時は、やっぱりシットコムとしか言いようのない、そんな作品にしたつもりです」

観客をスタジオに招き、ノンストップで撮影するスタイルは今となってはクラシカルで、実にアナログだが、そこからでないと生まれないライブ感もある。

この作品を1番見てほしいのは志村けんさん

「お客さんがいると何が違うかと言うと、役者は2~3メートル先にいる客席に向けて芝居をすることになる。無意識でそうなってしまうんです。撮り方は従来のテレビドラマ方式だったとしても、カメラ以外の何かに向けて演じると、やはりいつもとは違う感情になり、気持ちが上がっていく。だから、他のドラマと比べると俳優さんの圧がすごくて、画面から語りかけてくる感が半端じゃない。そこが、シットコム独特のテンションと緊張感、面白さにつながっていく気がするんですよね。

今回、舎人くんのシーンは、たまに恋人や母親が訪ねては来るけど、基本、1人が多い。それに対して隣の部屋に住む粕谷さん(佐藤二朗)一家のシーンはセリフ中心。まるで2つのドラマが同時進行で進んでいるような印象になるように心がけました。

香取さんとは、ノーアイデアから始まっても、時間を掛ければ必ず面白いものが出来る――20年かけて、何本も一緒に仕事をしていくなかで見つけた絶対的な安心感――そんなものを感じます。

取材していただいた5話で、通しリハーサル中に小道具のプリンを食べるよう、カメラの外から突然指示したのも、彼なら対処できると思ったから。あんなこと普通はやらない。俳優さんがパニックになっちゃいますから(笑)。

本番、たった1人で身体を張ってお客さんを喜ばせている香取さんを見ていると、なんだか志村けんさんと重なってしまいました。見た目は全然違うけど、2人は似ている気がする。発想力、表現力、そして瞬発力。だからこの作品を1番見てほしいのは、志村さんです」

「香取さんは、一緒に仕事をすればするほど、もっといろんなことをやらせてみたいと思わせてくれる俳優さんです。特に舞台『burst!』(15年)の時は、草彅(剛)さんと香取さんと僕とでずっと稽古場にこもって、ああだこうだと作っていったんですが、その時に、彼の発想力を目の当たりにしました。『こんなこともできるんだ』『こんな表情も出せるんだ』という瞬間がたくさんあった。『いつかこの演技を別の作品でやってもらおう』って。それが今回につながっている部分もあります。

彼も40歳を過ぎて、今後が楽しみです。同じことを20代の彼がやるのと40代の彼がやるのとでは全く意味が違いますから。そこに悲しさや味わいが加味されてくる。例えば彼が70歳になって、またこの舎人くんを演じたら、どれだけ悲しいドラマになるか(笑)。想像するだけで面白いじゃないですか。

舞台をやった時、彼は自分が役者だと思っていないと言ってました。でもそこがいいんです。芝居に邪心がない。うまくやってやろうとか、共演者を食ってやろうとか、今日はうまくいったぞとか、ダメだったなとか、そういう普通の俳優さんだったら誰もが感じて当たり前のことが、彼にはない。舞台に立っているときは、楽しいだけだと。

ただ、僕はちょっと不安なんですよ。自分が役者ではないと思っているということは、いつか突然、何の未練もなく、役者をやめるかもしれない。それはとても困る。もちろん歌も絵も続けてほしいけど、僕が脚本家であり演出家である以上、自分が関われるのは、役者である香取慎吾さんだけなんです。僕のためにも、ずっと役者を続けてほしいな。まあ、僕が絵のモデルになるという線はありますが、それは以前、彼に拒否されました」

(ライター 関亜沙美)

[日経エンタテインメント! 2020年10月号の記事を再構成]

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