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人工知能が変える社会
その未来に
ヒューマニティーはあるか

――脳科学者の茂木健一郎さんの最新刊は『クオリアと人工意識』。急速に進化する人工知能の可能性と限界、科学技術の発展と人類の未来について、自身の研究テーマである人間の「意識」を中心に多様な観点から考察を重ねた大作です。

僕が人間の脳に興味を持ったのは、物理学を学んでいた大学院生時代、人工知能の限界を説いたロジャー・ペンローズという英国の数理物理学者の著書を読んだことがきっかけです。博士号取得後、理化学研究所に入り脳の研究をする中で、人間の意識や「クオリア(感覚の持つ質感)」について深く考えるようになりました。

それから長い時間がたち、再び人工知能ブームがやって来ました。急速な発展を遂げる人工知能について、海外の論文や本を数多く読み、研究者と意見を交わす中で、最先端の現場で交わされている議論や雰囲気、そして自分自身の考えを整理したいと思ったのです。

――日本でも、人工知能の活用が急速に広がっています。数年前、野村総合研究所が英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授(当時)らとの共同研究で、「日本の労働人口の49%の仕事が10~20年後には人工知能やロボットで代替可能になる」と発表し、衝撃が広がりました。

人工知能はある一定の分野では既に、人間をはるかに超えた能力を発揮しています。例えば計算やゲーム、顔認証などの視覚情報処理などです。しかしその分野はまだまだ限定的です。オズボーン氏の研究は、人工知能が代替できる仕事の内容を分析したもの。最も注目すべきは、高度な付加価値を生み出すような仕事、クリエーティブな仕事は人工知能に置き換えることができないということです。

人工知能が発展すれば、人間は今まで以上に知性や感性を鍛え、高付加価値を生み出す仕事に取り組まなくてはいけなくなるのです。

――スウェーデン出身の哲学者ニック・ボストロムによる人工知能の発展段階を本作で紹介されていました(上表)。人工知能は既に、日常の様々な場面で高度な課題解決力を発揮しているようなイメージがありますが、実装されているのは第1段階のみなのですね。

そうです。何かを尋ねると返してくれるのが第1段階の「オラクル型」ですが、第2段階の「ジーニー型」になると、与えた課題に対して、人工知能自身がどんな手段で解決するかを判断して実行する。「軽くてヘルシーなランチを用意して」と依頼すると、ぴったりのランチを探して買ってきてくれる、というようなものです。第3段階になると、人工知能自身が目的を決め、それを実現するために様々なことを遂行していきます。

例えば、客観的に「成功」とされる人生を歩めるよう、本人の気持ちとは関係なく、大学や就職先、結婚相手までを選んでくる(笑)。

技術がどんどん発展するにつれて人工知能は自律性を増す一方、人間は次第に人工知能に支配されていく可能性があるのです。

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