スーツ選びは本当に奥が深いもの。慣れた方こそ、“これってどっちがいいの?”と迷うことが増えてくるはずだ。ここからは、中でも好みが分かれる“究極の二択”について考える。スーツ選びの意思を固めるうえできっと役に立つはずだ。
Choice(1)英か、
Choice(2)伊か
英・伊のスーツの違いとは何か? 前者は構築的、後者はソフトと仕立ての面ばかり語られがちだが、並んで重要なのはフィッティングに対する美学の差だ。英国仕立ては伝統的に、胸周りにスペースをとり、肩の傾斜は比較的緩やか、袖は全体的に太い傾向がある。つまり全体的に悠々としたゆとりを感じさせる仕立てが特色だ。対してイタリア、中でも南伊のスーツは、実寸よりすっきりフィットして見せることを重視する。胸周りは前に迫り出させる形にして横幅を抑え、袖も先に向かってすぼませる。肩はノボリを強調して、肉体の曲線美を引き立てるスーツをよしとするのだ。ゆとりの美学とフィットの美学、どちらに共感するかが選びの決め手だ。
《結論1》
“ゆとりのエレガンス”を楽しむなら 英国スーツ
《結論2》
“フィットのエレガンス”を楽しむなら イタリアスーツ
Choice(1)右:人機一体か、
Choice(2)左:とことん手縫いか
まず理解しておきたいのは、手縫い工程が多いほどいいスーツであるとは限らないということ。そのうえで両者を対等な目線で比較すると、どちらを選ぶかはTPOによって決めるのがひとつの正解といえるだろう。写真はどちらもナポリ製のスーツだが、両者でかなり印象が異なるのがわかるはず。左はほぼ総手縫いで、味わいと温かみが満点だが、土着的な印象も強い。対して右はハンドとマシンを融合させた仕立てで、柔らかくもクリーンで都会的だ。粋な趣味性を発揮したい場面では前者を、洗練された印象を演出したい場面では後者をという具合に、シーンに適した選択を意識したい。
《結論1》
通な趣味性で選ぶならとことん手縫いを
《結論2》
都会的な洗練で選ぶなら人機一体を